ホーム > コラム

コラム

「余剰資金の使い道から考える会社観の違い」

 法人企業統計によると、2017年度の企業(金融・保険業を除く全産業)の利益剰余金、いわゆる内部留保は446兆円で、内部留保を 中核にした自己資本比率は41.7%と過去最高に積み上がっています。内部留保は貸借対照表の貸方の話ですが、それに対応する借方には現金が222兆円と、これもまた過去最高の水準にあります。
 資金の用途として最も望ましいのは、将来の成長のための設備投資です。しかし、少子高齢化で人口減少が進み、潜在成長率が下がっている我が国で、企業の成長に資する投資がそう簡単に見つかるものではありません。投資機会がないまま、利益が上がり続ければ、内部留保と現金が積み上がります。その結果、常に株主価値の上昇を求められる上場企業では、余剰資金の使い方が大きな課題となります。
 欧米であれば、答えは明快で、配当や自社株買いなどの株主還元に使うべきということになります。しかし、日本ではそのように簡単に割り切ることできません。そこには欧米とは異なる会社観の存在が背景にあるように思います。

続きを読む

「買った時に出現する利益とは」

 結果にコミットする」のコマーシャルで有名なライザップが、業績の下方修正に追い込まれ、事業の再編を進めています。
 ライザップは業績拡大のために企業買収を積極的に進めていましたが、決算において企業買収によって生じた「負ののれん」の会計処理が注目されました。そこで、負ののれんによって生じる利益とは何なのか、考えてみます。

続きを読む

「経済対策に振り回されない」

 予定どおり10月に消費増税があると、消費の落ち込みが予想されます。そのため、消費を盛り上げようとして、様々な経済対策が実行されようとしています。クレジットカード利用に伴うポイント還元、プレミアム商品券の交付、あるいは車や住宅などの購入を対象とした各種の減税も用意されています。こうした対策により消費を喚起しようというのが政府の狙いなのですが、それに対して我々消費者はどのように対応すべきなのでしょうか。
 確かにこれらの対策は、定められた期間に、定められた方法で、定められた物品を購入すれば、そうでない場合に比べて金銭的に有利になるように設計されていますから、この機会に先々消費されると予想される分も含めて多めに購入した方がいい、と考える人がいてもおかしくありません。しかし、私はそうした考え方には賛成できません。
 京セラフィロソフィーで有名な稲盛和夫氏も次のように言っています。

続きを読む

役員報酬決定における『縦の公平性』と『横の公平性』」

 経済誌は日産のゴーン前会長の記事でもちきりです。昨日まで日産の業績をV字回復させた救世主としてもてはやされていただけに、そのカリスマ経営者が一夜にして被告人に転落するのですから、世間の注目を浴びるのも無理もありません。
 個人的には、正式な組織決定を経ていない、キャッシュの支払いを退職後に持ち越された金額の不記載が、直接の逮捕容疑である有価証券報告書の虚偽記載に該当するのかということに疑念を持っています。また、財務諸表に与える影響としては、はるかに大きかった東芝の2000億円にものぼる粉飾事件には動かなかった東京地検が、今回やけに積極的なのも、均衡を失しているような気がしてなりません。
 報道によれば、この事件の裏には日産とルノーの主導権争いなど、表にできない闇の部分が多くあり、その全貌が分かるにはかなりの時間がかかりそうです。あるいは、最後まで真相は分からないのかもしれません。
 この事件からくみ取るべき教訓は多々あり、意見の相違もかなりあると思います。ただ、ゴーン氏の役員報酬は相当高額であり、それもほぼ独断で決めていたらしいことから、役員報酬の決定方法にもっと透明化が必要であるということについては、現段階でもほぼコンセンサスは得られているように思います。しかし、役員報酬の透明化がなされたところで、一般社員の不満感は解消しそうにありません。

続きを読む

「不毛な議論を招く軽減税率」

 政府は、既定方針通り2019年10月から消費税率を10%に引き上げる予定だと発表しました。そういいながらも、「リーマン級のショックがあれば別だ」と、相変わらず一定の留保を置いていますから、再度の延期もまったくないというわけではなさそうです。
 消費税率を10%にするときには軽減税率を導入するということになっていますから、軽減税率の議論が再燃しています。そうした報道を目にするたびに、軽減税率が巻き起こす不毛な議論にうんざりするのは私だけではないでしょう。

続きを読む

「AIが人柄を判断する」

 私は以前、銀行で融資を担当していたことがありますが、融資をする際に最も重要なのは与信判断でした。与信判断とは、借入申込人におカネを貸してもいいかどうか、そして貸せることができるとしたら、いくらまで貸せるかを判断することです。

続きを読む

「監督官庁がビジネスモデルを描く業界」

 最近、銀行経営が行き詰っているという話題が雑誌や新聞でよく取り上げられます。その主因は成長鈍化やカネ余りで銀行の主たる収益源である貸出金の利ザヤが縮小していることにあり、日銀のマイナス金利政策もそれに追い打ちをかけています。
 そんな中でも、都市銀行は集約化が進み、資本力や人材も豊富で、海外展開をしていることもあり、何とか苦境を切り抜けられるのではないかと見られています(それも確かではありませんが)。問題は地方銀行です。日本全体の人口減少が進む中で、東京の一極集中は加速していますから、地方の人口減少は一層深刻です。地方銀行はその成り立ち上、地元の企業や個人への貸し出しをビジネスの主力とせざるを得ず、それに代わる収益機会を持たないだけに、状況は誰が考えても深刻です。

続きを読む

「司法取引が変える組織と個人の関係」

 司法取引とは容疑者や被告が自分以外の犯罪について捜査機関に協力する見返りに、自分自身の求刑を軽くしたり、起訴を見送ってもらう司法上の取引です。アメリカのドラマや映画でよく見るものですが、それが日本でもこの6月から適用開始されました。
 その日本版司法取引の第1号がこのほど明らかになったのですが、その内容はやや意外なものであり、日本人の組織と個人の関係を考え直すものであったように思います。

続きを読む

「インフレ目標に対する違和感」

 日銀はインフレ率2%を目標に、金融緩和を行ってきましたが、目標達成はなかなか難しい状況です。日銀は目標の達成時期を何度も延期はしてきましたが、インフレ目標そのものの旗は降ろしていません。当初の意気込みが大仰だっただけに、目標の撤回は難しいのでしょうが、そろそろ、インフレ目標に執着することの弊害にも気を付けた方がいいように思います。

続きを読む

「『会社の利益』と『社会の倫理』」

 スルガ銀行が不正融資問題で揺れています。シェアハウス投資に対する融資で、売買契約書の物件価格の水増しや通帳コピーの改竄などの不正行為の実施が疑われています。詳細は第三者委員会の調査で明らかにされるでしょうが、状況からすれば、かなり疑念が濃いと言わざるを得ないでしょう。
 この事件に関連して、異なる観点から、次の二つのことを指摘したいと思います。

続きを読む
前の10件 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11
このページの先頭へ