経営計画は将来のために作成することはいうまでもありませんが、会計(現在の決算書)にも重大な影響を与えるようになってきていることに注意しなければなりません。
経営計画は自社の経営資源や実力を十分に踏まえた上で作成します。過去の実績と懸け離れた経営計画は絵に描いた餅です。その意味で現時点での決算書をベースに経営計画を作るという、過去から未来への道筋は分かりやすいのですが、近年注目されているのは経営計画から決算書という未来から過去に時間が逆流する道筋です。なぜなら、将来の収益力の見込みが、決算書の数値を決定する会計項目が増えてきたからです。その代表が税効果会計と減損会計です。
東芝の原発事業に関する減損損失の記事が連日新聞紙上を賑わせています。その損失規模は数千億円に達し、金額次第では債務超過の危険性もあると言われています。債務超過になると、金融機関による支援が難しくなりますから、東芝は虎の子の半導体事業の一部売却など解体的出直しが迫られている状況です。
東芝に限らず、期末に近づくと、「減損損失」の記事が目に付くようになります。減損損失は、東芝では当然のことながら将来に対する不安材料、すなわち否定的ニュアンスで報道されていますが、肯定的ニュアンスで報じられる場合もあります。たとえば、ソニーは映画事業の不振で1000億円以上の減損が発生すると発表しましたが、将来に向けて好材料と評価している市場関係者もいるようです。同じ減損でも、どうしてこのように評価が違うのでしょうか。そこで減損の二つの側面を検証してみましょう。
同じ物事でも視点をどこに置くかで見え方が変わります。たとえば、過去に大きな功績をあげた老人は過去の実績に焦点を当てれば偉大な人間として記録されますが、これから何ができるかという将来の可能性から見れば、活躍残余年数の短さが災いし低い評価しか付けられません。逆に、今までの実績は見るべきものがない若者でも潜在能力の高さに注目すれば、高く評価できます。視点の機軸を過去にするか将来にするかで、映る姿は違ってきます。ただ、過去の実績は誰が見ても変わらない確固としたものですが、将来の見え方は人によって評価が変わる不確実なものとなります。
会計でも「どこから見るのか」という視点が重要なことをIFRS(国際会計基準)は再認識させます。
日本の経済状況は為替動向に大きく左右されます。円安は輸出型大企業に有利であり、東証の主要銘柄はこうした大企業が主力ですから、円安は株価上昇につながります。円高は逆ルートをたどり、株価の下落を招きますから、国内には「円安歓迎、円高敬遠」の空気が蔓延します。
確かに企業目線からは円高は好ましくないというのは分かりますが、消費者目線からは違った風景が見えるはずです。円が高いということは自国通貨が評価されるということで、決して悪いことばかりではないからです。にもかかわらず、我が国で円安が過度に選好されるのはカネの使い方に原因があるように思います。