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コラム

「経済成長を抑制する消費形態の変化」

安倍政権の経済政策の第一の目標は成長の加速ですが、経済成長を端的に示す指標であるGDP(国内総生産)も物価上昇率も当初期待していたほどには高まりません。その原因をもっぱら消費税増税等の経済政策の不備に求める考え方も存在しますが、私は経済構造の変化も大きな要因ではないかと思っています。経済構造の変化でよく言われるのは、人口減少や技術革新の問題などですが、ここでは消費形態の変化に着目してみましょう。
 かつては、モノを消費するためには、専門の事業者から新品のモノを購入して、個人の占有物とすることが暗黙の前提でした。ところが、現在では、その暗黙の前提が崩れかけています。モノを1人で占有するのではなく共同で借りたり、あるいは、売買や賃貸の当事者も事業者だけではなく、消費者も台頭するなどして、実に多様化しています。ネットの普及がそうした消費形態の多様化を後押しします。そして、それが数字で表現される経済成長を低める要因となっているのです。

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「安心を買う」

日本の会社は現金預金を貯めすぎると言われています。日銀が発表した資金循環統計によると、企業が保有する現預金の14年3月末の残高は232兆円と過去最高を更新しました。会社が眠らせている現金預金を積極的に投資に使うか、あるいは株主に還元すれば、日本経済は活性化するというのです。
現在、預金利率はほとんどゼロで、現預金を積み増すことの収益的メリットはありません。会社内で成長のための投資に回せない現預金は株主に返還しろ、というのが株主側の論理です。それに対し、「過少な内部蓄積では、将来、赤字を出したときすぐ破綻に追い込まれかねない」と反論しても、「赤字を垂れ流すような会社は市場から撤退すればいい」と軽く受け流されてしまいます。株式会社の原則からすれば、それはそのとおりなのですが、会社を株主ではなく、そこで働く社員の集合体として見ると、また違った姿が見えてきます。
 雇用の流動化が十分とはいえない日本では、これまで働いていた会社が倒産すると、社員は次の仕事を探すのは容易ではありません。社員の側からみれば、多少業績が悪くなっても、持ちこたえられる会社であって欲しいというのが正直な心情であり、会社に蓄積される自己資本とキャッシュは厚いに越したことはありません。それが安心できる会社です。それは単に社員だけのためではなく、自分の会社に安心感を持てるから、会社のために一生懸命働き、会社を成長させることにより長期的に株主にも報いることができる、というのが内部蓄積派の主張です。
 成熟経済に移行し、投資に使い切れない余剰キャッシュが出てくると、そのキャッシュを株主還元として社外に流出させるか、あるいは、まさかのときに備えて社内留保するかの二者択一を迫られます。株式市場は当然、株主還元を歓迎します。最近話題の社外取締役の拡大も、こうした議論と無縁ではありません。社員からの持ち上がりの取締役ばかりだと、不要に内部蓄積してしまうという懸念があるからです。

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「経営者個人保証の解除は進むか」

全国銀行協会と日本商工会議所などが、強制力のない自主ルールとして「経営者保証に関するガイドライン」を本年2月に策定しました。このガイドラインは銀行借入に付随する経営者(社長)個人保証の解除を目的としたものですが、我が国で長い間慣習として定着してきた観のある社長個人保証が減少していくのか注目されます。

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「キャッシュリッチな会社の悩み」

最近、キャッシュリッチな会社が増えています。キャッシュがたくさんあることは金持ちの象徴であり、「キャッシュが多ければそれでいいではないか、なんら文句をつけることではあるまい」といわれるかもしれません。個人であれば、自分で稼いだものをキャッシュとして貯め込むことに、誰も文句はつけられません。せいぜい「あいつはケチだ」とか「あいつの趣味は通帳の残高を見ることだ」といった陰口をたたくのが精一杯です。しかし、個人と会社は違います。

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「経営者の立ち位置」

経営者(取締役)は株主から委託を受けて、従業員を雇用して会社を経営します。経営者は、会社において株主と従業員の結節点に当たる存在といえます。経営者の立ち位置は株主と従業員の間にあることになりますが、その比重をどちらに置くかで経営は大きく変わります。

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「アマゾン銀行の衝撃」

週刊ダイヤモンド2014年5月3日、10日合併号の産業レポートは、「アマゾンの法人融資サービス」でした。私はこのレポートを読んで、少なからぬ衝撃を受けました。それは、あのアマゾンが融資を始めたからではなく、アマゾンが採用する融資方法がとても鮮烈だったからです。

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「あるがままの現実を見るか、見たい現実を見るか」

2014年4月19日号の『週刊東洋経済』に「本業喪失~富士フイルムに学ぶ勝ち残りの法則~」が特集されていました。この特集では経営者の決断の重要性が強調されています。経営者の迅速で果断な決断が富士フイルムを救ったことはいうまでもありません。ただ、経営者の決断の前に、現実を正しく見ることが必要になります。そこで、本稿では現実を直視することの重要性を考えて見ます。

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「コンピュータ将棋と埋没原価」

コンピュータ将棋と一線級のプロ棋士が対決する「第3回将棋電王戦」が行われました。前回はコンピュータの3勝1敗1分け、今回も4勝1敗でコンピュータの勝利に終わりました。少し前までは、将棋はチェスなどに比べて、成り駒や獲得駒の再使用など、駒の変化のバリエーションが多く、コンピュータがトッププロに勝つようになるのは相当先になるだろう、という意見が大勢でした。でも、コンピュータソフトの進歩はそうした予測をはるかに超えています。
 なぜ、コンピュータソフトは強いのか、と聞かれたあるプロ棋士は次のようなことをいっていました。
「コンピュータもプロ棋士も最善手を探すことについてはほとんど差がない。最も大きな違いは後悔の有無だ。人間は一度悪手を指すと、その悪手について後悔の念から迷いが生じて、その後の指し手も間違えることが多い。ところが、コンピュータは悪手を指しても、それがその後の指し手に影響することなく、常に平常心で最善手を探し続けられる。」
 私はこの話を聞いて、常に過去の指し手に惑わせ続けられる人間に勝ってほしいと思いました。そのとき、ふと「それは、いつも会社の経営者に対して自分が言っていることと違うな」とも感じました。それは埋没原価(サンクコスト)についてです。

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内部留保かベアか

 アベノミクス効果で、物価が上昇し企業収益が好転したとしても、個人の収入が変わらなければ、個人にとっては物価上昇分だけ実質可処分所得が減少し、経済は持続的に拡大しません。しかも、持続的拡大のためには個人の収入増加は一時金ではなく、恒常的な収入増加をもたらす定期給与のアップが望ましい、ということになります。そこで、企業にベースアップ(ベア)を期待するという異例の要望が政府から出されました。ベアをするかどうかは企業自らが決めることであり、政府の要望には違和感がありますが、政府とすれば、利益が上がり、キャッシュも貯まっており、給与を上げる環境は整っているのだから、ベアをしろといいたいのでしょう。
 こうしたことを背景に、最近の新聞紙面にはベア実施のニュースが踊ります。ただ、ベアを実施する企業は円安で潤う東京を中心とした大企業がほとんどであり、中小企業を含めた国全体のコンセンサスが得られているといった状況ではありません。しかも、景気拡大のためにはベアが持続的に実施されることが必要ですが、ベアを実施する企業でも「政府の要望もあり」、本年は特別といったニュアンスが強いように感じます。
日本の企業は概して、ベアに慎重で、内部留保を優先する傾向が多いように見受けられるのはなぜでしょう。

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のれん償却方法の違いから見る企業文化

2014年1月27日の日本経済新聞に、企業がM&A(合併、買収)をやりやすくするためにのれん償却を不要とすべく、会計基準を改正するように検討に入った、という記事が掲載されていました。今回は、のれん償却方法の違いとその背景にある企業文化との関係について考えてみます。

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