デフレが止まりません。政府、日銀も懸命に手を尽くしているのですが、なかなか脱却できません。デフレは貨幣的現象であるから、貨幣をコントロールする権限を有する日銀さえ頑張れば、デフレから脱却できるという論者もいます。しかし、デフレが長期化している我が国の現状に加え、世界的に物価低下傾向が蔓延している状況を見るに、デフレは一国の金融政策でどうにかできるものではなく、長期化すると考えた方がいいと思います。そうした環境下で、企業経営はどのように考えたらいいのでしょうか。
インフレ下の経営
高度経済成長時代はインフレでした。インフレとはモノの値段が上がることですから、借金していち早く土地などのモノを買うことが成功の早道でした。借入金の表面金利は低くはありませんでしたが、モノの値段の上昇はそんな高金利を吹き飛ばす勢いであり、モノを買うことに躊躇はいりませんでした。特に土地の値上がりは急で、銀行も土地担保には全幅の信頼を置いていたため、土地さえあればいくらでもカネを借りられる時代でもありました。その結果、借金して土地を買うと、その土地が値上がりして担保力を増強して、さらにカネを借りることができて、また土地を買う、という形で企業はスパイラル的に拡大していくことができたのです。この時代は資産を大きく持っているのが、いい会社の一つの条件でした。その典型がダイエーです。ダイエーは高度成長時代の申し子だったといえます。しかし、時代の反転はこうした企業の存続を許しませんでした。
デフレ下の経営
デフレではインフレと反対の事象が発生します。デフレ下で借金をしてモノを買うと経営は苦しくなります。借金の表面金利は昔に比べれば、かなり低くなっていますが、貸借対照表で借金の反対側にある資産の価格が日々下がっているのですから、実質金利負担は重くなります。
デフレでは実物資産より預金や債券などの金融資産の価値が上がります。金融資産だけならいいですが、当然借入金などの金融負債の価値も上がります。貸借対照表で金融資産と金融負債がバランスしているなら、デフレでもまったく影響を受けません。しかし、多くの会社は、借方は実物資産、貸方は金融負債が多くなります。デフレ下では実物資産は日々減価するのに対し、金融負債はその価値を保ち続けますから、何もしなければ、自己資本は日々失われていくのです。
実質無借金経営を目標に
デフレ下ではできるだけ資産と負債を圧縮することが必要です。求められるのは「持たざる経営」です。収益性の低い資産は売却して、借金を返済することが急務です。近年、上場企業では無借金経営が年々増加してきています。
「こういうときこそ、積極的に外に打って出る」という逆張り戦略もないではありませんが、よほどの成算がない限り危険です。デフレ状況が長引くという想定に立つなら、非上場企業でも借入金を預金の範囲内に留める実質無借金を経営目標とするのが無難です。