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【経営指標】「損益分岐点売上高」

2023/04/20

前回までは、安全性に関する経営指標をお伝えしましたが、今回からは収益性に関する内容をお伝えいたします。今回は、損益計算書を読みこなす上で覚えておきたい「損益分岐点売上高」についてご説明いたします。


 損益分岐点とは、どれだけ売り上げれば費用を回収できるかという採算点を示すものです。要するに、売上高と費用が一致する点ということになります。損益分岐点以下の売上であれば利益が全く出ていない状態、損益分岐点以上の売上なら利益が出ている状態です。

 「損益分岐点売上高」と実際の売上高を比較することで、現在の経営状況を知ることができます。

 また、今後の利益計画を策定する際には、今後増減する固定費を加味した上で、会社を運営していくためにどれだけ売上が必要かを計算することができるため、活用度の高い計算式となります。


 「損益分岐点売上高」は以下の手順により計算することができます。


1.費用を「変動費」と「固定費」に分ける

 「変動費」とは、売上高に比例して増減する費用を言います。

 例えば、仕入高、外注費及び販売手数料などがあります。「固定費」とは、売上高が増減しても変わらない経費です。つまり、「変動費」以外の費用が「固定費」となります。


2.限界利益率を計算する

 上記1の計算をした後、売上高から「変動費」を差し引くと限界利益になります。

 更に、限界利益から「固定費」を差し引くと経常利益になります。

 限界利益率は、限界利益÷売上高により、計算することができます。


3.損益分岐点売上高を計算する

 上記1及び2の計算をした後、「固定費」÷限界利益率により、損益分岐点売上高を計算することができます。


 例えば、固定費が1,200万円、変動費が売上高の40%である企業の損益分岐点売上高を求めてみましょう。

 この場合、限界利益率は、(売上高)100%-(変動費率)40%=(限界利益率)60%となりますので、

(固定費)1,200万円÷(限界利益率)0.6※=(損益分岐点売上高)2,000万円となります。

※「60%で割る」は、「÷0.6」となります。


 利益を増加させるためには、

(1)売上高の増加、

(2)変動費率の低減、

(3)固定費の削減

の3つの視点から検討する必要があります。

(2)と(3)の検討は、どうすれば損益分岐点を下げることができるかを検討することと同義になります。損益分岐点が下がれば、より利益が計上しやすくなります。

 現在の経営状況を把握する際にも、また、今後の改善策を検討する際にも、是非自社の「損益分岐点売上高」を計算していただき、企業経営の参考にしていただけたらと思います。


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http://www.ag-tax.or.jp/seminar/2023/04/post-53.php



(2023年4月あがたグローバル経営情報マガジンvol.84 「試算表を読みこなすための経営指標(基礎編)」に掲載)

執筆者

小林 藤子Fujiko Kobayashi

マネージャー・中小企業診断士

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