「日本資本主義の父」と言われ、明治時代に数多くの企業の設立に関わった大実業家である渋沢栄一。
2021年の2月14日から渋沢栄一の生涯を描くNHK大河ドラマ「青天を衝け」がスタートし、2024年を目途に変更が予定されている新一万円札の肖像にも選ばれたことで、話題を呼んでいます。
その渋沢栄一の代表的な著作である『論語と算盤』は、「人はどう生きるべきか」「どのように振舞うのが人として良いのか」を学ぶための「論語」の教えと、「算盤」である経済活動を一致させることの大切さを説いています。
事業を考える場合、自社の利益を上げていこうという考えがなければ事業は成長しないし、豊かさも実現できない。
だからこそ、利益を上げたいという欲望をまずは心に抱き続ける一方で、その欲望を実践に移していくために道理を持って欲しいと述べています。
その道理とは、社会の基本的な道徳をバランスよく保つことであり、社会や人と交わるための日常の教えをきちんと守ることを意味しています。
本当の経済活動は、社会のためになる道徳に基づかないと、決して長く続くものではないと考えていました。だからこそ渋沢栄一は、「論語」を社会で生きていくための絶対の教えとして、常に自分の傍から離したことがなかったようです。
一見かけ離れているかに思える「論語」と「算盤」ですが、そのバランスの大切さは、渋沢栄一が約470社もの会社設立を成功させた明治期であっても、100年あまり経過した現代においても変わることのない経営の原理原則のように思います。
1916年に執筆された「論語と算盤」の原文はとても難解ですが、現代語訳は理解しやすいので一読されることをお勧めいたします。
(2021年2月あがたグローバル経営情報マガジンvol.7
「今月の経営KEYWORD」に掲載)