中小企業からグローバル企業まであらゆる経営課題に解決策を

「雨が降れば傘をさす」 (松下幸之助氏 『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』PHP文庫)

2021/01/20

 わずか3人で細々と始めた事業を、一代で世界的な企業にまで成長させ「経営の神様」と崇められた松下幸之助氏。
皆さんもたくさん本や雑誌で、松下幸之助氏の経営哲学や経営のコツを目にされていることと思います。
今回は私の好きな言葉の一つ、「雨が降れば傘をさす」について解説したいと思います。


 ある新聞記者が松下氏のところに取材に来たとき、「あなたの会社は非常に急速な発展を遂げられましたが、どういうわけでそうなったのか、その秘訣を聞かせてくれませんか」と質問しました。
その時松下氏は、「あなたは雨が降ったらどうされますか」と逆に質問したというのです。
その記者は、「そりゃ、傘をさします」と答え、松下氏は、「そうでしょう。雨が降れば傘をさす。
そこに私は発展の秘訣というか、商売のコツ、経営のコツがあると考えているのです」と答えました。


これは松下氏が、「天地自然の理法」に従って仕事をすることの大切さを説いています。
もう少し分かりやすい言葉で表現するならば、「当然のことを、当然にやっていく」ということになります。
つまり、ごく当たり前の行動にこそ、発展の秘訣、商売のコツ、経営のコツがあると言っているのです。


 例示として挙げられているのは、「商品は適正な利益が得られる価格で販売する」、「売ったものの代金はきちんと集金する」、「売れないときには無理に売ろうとせずに一休みする」という内容です。 
「雨が降れば傘をさすようなことは誰でも知っているが、商売や経営のこととなると、私心にとらわれて判断を誤り、傘をささずに歩き出すようなことをしがちである」と警鐘を鳴らしているのです。


 現在のコロナ禍は、世の中のこれまでの常識を大きく破壊しているとも言えます。
経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「未来が早くやって来た」との表現で、我々に新時代の経営方針を立案すべきことを投げかけています。
 過去からの経験則だけでは経営ができない不安定な時だからこそ、奇をてらったり、いたずらに騒ぎ立てるのではなく、「ごく当たり前のこと、平凡なことを適時適切に実行していくことが経営の秘訣である」との松下氏の言葉を大切に、自社の経営を見直す機会を持ってみたいものです。


(2021年1月あがたグローバル経営情報マガジンvol.4
「今月の経営KEYWORD」に掲載)

執筆者

芦原 誠Makoto Ashihara

あがたグローバル税理士法人 代表社員 理事長
あがたグローバルコンサルティング株式会社 代表取締役社長
税理士

最新の記事