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電子取引データのデータ保存の義務化

2022/03/01

税務トピックスQ&A 3月号


Q.電子取引データの電子保存が義務化されました。当社も準備を進めてきましたが、運用に至っていません。宥恕期間も設けられたため、電子取引について基本事項を再確認させてください。


A.■電子取引データ保存改正の概要

 これまでは、電子取引の取引情報について、原則として電子データのまま保存するところ、代替措置として出力した書面等による保存も認められていました。しかし、 2022 年 1 月以降は、一定の保存要件を満たした上で、電子取引データのまま保存することが義務化されました。データ保存の義務化は基本的に全ての事業者に影響する重要な改正となります。


■電子取引の範囲

 電子取引とは、取引情報の受け渡しを電磁的方式により行う取引をいいます。なお、取引情報とは、取引に関して受領し、または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書などに通常記載される事項をいいます。具体的には、インターネット等による取引、EDI取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を受け渡す取引等をいいます。


■ 電子取引データの保存等の要件

 電子取引データの保存等にあたっては、下表のとおり、真実性、検索性、可視性の要件が定められており、これらの要件を満たした保存が求められます。



 なお、国税庁から公表されている「電子帳簿保存法一問一答」や各種規程等のサンプルが、保存方法等の整備の際に参考となります。


■ 罰則規定

 電子取引の電子データの改ざん等の不正があった場合には、重加算税が 10%加重されることとなります。

 また、電子取引の取引情報について、これまでどおり書面で保存していた場合には、青色申告承認取消しの対象になり得えます。ただし、税務調査の際に納税者からの追加的な説明や資料提出等により申告内容の適正性が確認できれば、保存要件を満たしていないことのみをもって青色申告の承認取消しにならないことが国税庁から示されています。


■ 宥恕措置の適用

 昨年末に 2023 年 12 月までの電子取引の取引情報の保存について、書面保存を認める宥恕措置が整備されました。宥恕措置の適用にあたっては、「保存要件を満たして電子データ保存ができなかったことにつき、税務署長がやむを得ない事情があると認めること」、「整然明瞭な状態で出力書面の提示等ができるようにしておくこと」といった要件があります。

 なお、事前申請等の手続きは不要とされており、税務調査等の際に税務職員からやむを得ない事情の確認等を受けた場合には、対応状況や今後の見通しを伝えれば差し支えないこととされています。

 電子取引情報のデータ保存の義務化は実質的に2 年間の準備期間が追加されたこととなりますが、今後もさまざまな面でのデジタル化が進むと予想されます。2 年間の準備期間を有効に活用し、システム整備や運用のリハーサルを早めに行っていただき、2024 年 1 月を万全な状態で迎えていただきたいと思います。

執筆者

宮下 知昭Tomoaki Miyashita

アシスタントマネージャー・税理士

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