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在宅勤務に係る費用負担の取り扱い

2021/06/01

税務トピックスQ&A 6 月号


Q.当社は在宅勤務を導入していますが、在宅勤務に係る費用を会社でどのように負担すべきか悩んでいます。税法上はどのように取り扱われるのでしょうか。


A.実費精算が原則

 従業員が在宅勤務を行う場合には、様々な費用が発生します。その際、従業員が負担した在宅勤務に通常必要な費用を「実費精算」する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

 具体的な「実費精算」の方法としては、次のような方法が考えられます。

 ① 企業が従業員に対して金銭を仮払いした後、従業員が事務用品等を購入し、その領収証等を会社に提出してその購入費用を精算する方法

 ② 従業員が事務用品等を立替払いにより購入した後、その領収証等を会社に提出してその購入費用を精算する方法

 反対に、交通費の支給を止め、その代わりに社員に毎月 1 万円など一定額を渡し切りで支給して「実費精算」を求めないような場合には、従業員への給与として課税されることになりますので留意が必要です。


 ◇ 在宅勤務に係る事務用品等

 在宅勤務に必要なパソコンなどの事務用品等を従業員に「貸与」する場合には、給与課税の必要はありません。しかし、事務用品等を支給して所有権が従業員へ移転する場合には、従業員に対する現物給与として課税する必要があります。


 ◇ 通信費

 電話料金のうち「通話料」については、通話明細書等で業務使用の通話料金が確認できるため、その金額を会社が「実費精算」する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

 一方、電話料金の基本使用料やインターネット接続に係る通信料については「実費精算」が困難であるため、下記の【算式】で算出した金額を従業員に支給する場合には、給与として課税する必要はありません。


【算式】

 業務のために使用した基本使用料や通信料等

=[従業員が負担した 1 か月の基本使用料や通信料等

(※)]×[その従業員の 1 か月の在宅勤務日数/該当月の日数]×1/2

(※)業務のための通話を頻繁に行う場合には、「実費精算」に代えて、通話料を【算式】に含めて算出することができます。


 ◇ 電気料金

 電気料金の場合も、在宅勤務に使用した部屋の床面積と在宅勤務の日数を考慮した下記の【算式】で算出した金額を従業員に支給する場合には、給与として課税する必要はありません。

 【算式】

 業務のために使用した基本料金や電気使用料

=[従業員が負担した 1 か月の基本料金や電気使用料]×[業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積]×[その従業員の 1 か月の在宅勤務日数/該当月の日数]×1/2

《 「1/2」を掛けているのは、1 日(24 時間)の内、睡眠時間(平均 8 時間(総務省統計局))を除いた 16

時間に占める労働時間(法定 8 時間)の割合とされています。》


国税庁発表のFAQ

 本件の詳しい内容や【算式】をより具体的に理解するためには、顧問税理士にご相談いただくか、令和 3

年 1 月に国税庁ホームページにて、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公表されていますのでご参照ください。

執筆者

芦原 誠Makoto Ashihara

あがたグローバル税理士法人 代表社員 理事長
あがたグローバルコンサルティング株式会社 代表取締役社長
税理士

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