収益性に関する経営指標について、今回は、損益計算書を読みこな
す上で確認しておきたい「経常利益」についてご説明いたします。
さて問題です。損益計算書の中に利益はいくつあるでしょうか。
答えは5つです。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純
利益、当期純利益です。
前回ご説明した売上総利益は、「売上高-売上原価(商品仕入原価、
製品製造原価、工事原価など)」で算出しました。
営業利益は「売上総利益―販売費及び一般管理費」で算出され、経
常利益は「営業利益+営業外収益-営業外費用」で算出されます。
経常利益とは、企業の経常的な活動の中で生み出した利益を示し
ています。
ご承知の通り、新聞紙上で報道される上場企業の記事では、「営業
利益」を用いた記事が並んでいます。
しかし多くの中小企業では、借入利息の負担を無視できないこと、
営業外収益が大きく計上される事例が多いことから、経常的な収
益力により近い「経常利益」を重要視すべきとお伝えしています。
経常利益を「率」で捉える場合と「絶対額」で捉える場合があるの
は、前回の売上総利益の場合と同じです。
経常利益率は、「経常利益÷売上高」により求めることができます。
企業は必ず季節変動要因を抱えているものですが、「赤字の月があ
っても仕方ない」と思考停止することなく、「毎月、経常利益を計
上し続けるためには、どんな打ち手があるか」を重要な経営課題と
して検討することを提案します。
京セラの創業者である稲盛和夫氏は、「経常利益率は、10%以上計
上しなければならない」と常々仰っていました。
著書である「稲盛和夫の実学」(日本経済新聞出版社)において、
業容の拡大により売上高が増加する一方で、償却負担や金利負担
が増加している企業が、「拡大路線を続けていくべきか、経営体質
の強化を主眼とすべきか」を悩み、稲盛和夫氏に質問している経営
問答があります。
稲盛和夫氏は、その経営者に対して、「今後経常利益率が10%に達
して、更に少しずつ上昇するかどうかで判断すべきだ」と説いてい
ます。経費の伸びが売上高の伸びよりも低ければ、結果的に経常利
益率は伸びていきます。そのような状態になっているか、月次で試
算表をよく確認していけば良い、利益が減ってくれば事業拡大に
ブレーキをかけることをすべきだと仰っています。
毎月損益計算書を見て経常利益を確認する、そしてその状況に合
わせて対策を講じる、ということを、京セラでは注意深く行ってき
たのだと感じます。稲盛和夫氏の会計重視の姿勢、経営の判断材料
として損益計算書を捉えてきたことが窺える問答だと思います。
経常利益率の適正値は業種や各企業で異なると思いますが、自社
の損益計算書を毎月確認する際には経常利益を必ずチェックして
いただき、現状把握と今後の企業経営に活用していただけたらと
思います。
(2023年6月あがたグローバル経営情報マガジンvol.90 「試算表を読みこなすための経営指標(基礎編)」に掲載)