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【経営指標】「経常利益」

2023/06/20

 収益性に関する経営指標について、今回は、損益計算書を読みこな

す上で確認しておきたい「経常利益」についてご説明いたします。

 さて問題です。損益計算書の中に利益はいくつあるでしょうか。

 答えは5つです。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純

利益、当期純利益です。

 前回ご説明した売上総利益は、「売上高-売上原価(商品仕入原価、

製品製造原価、工事原価など)」で算出しました。

 営業利益は「売上総利益―販売費及び一般管理費」で算出され、経

常利益は「営業利益+営業外収益-営業外費用」で算出されます。

 経常利益とは、企業の経常的な活動の中で生み出した利益を示し

ています。

 ご承知の通り、新聞紙上で報道される上場企業の記事では、「営業

利益」を用いた記事が並んでいます。

 しかし多くの中小企業では、借入利息の負担を無視できないこと、

営業外収益が大きく計上される事例が多いことから、経常的な収

益力により近い「経常利益」を重要視すべきとお伝えしています。

 経常利益を「率」で捉える場合と「絶対額」で捉える場合があるの

は、前回の売上総利益の場合と同じです。

 経常利益率は、「経常利益÷売上高」により求めることができます。

 企業は必ず季節変動要因を抱えているものですが、「赤字の月があ

っても仕方ない」と思考停止することなく、「毎月、経常利益を計

上し続けるためには、どんな打ち手があるか」を重要な経営課題と

して検討することを提案します。

 京セラの創業者である稲盛和夫氏は、「経常利益率は、10%以上計

上しなければならない」と常々仰っていました。

 著書である「稲盛和夫の実学」(日本経済新聞出版社)において、

業容の拡大により売上高が増加する一方で、償却負担や金利負担

が増加している企業が、「拡大路線を続けていくべきか、経営体質

の強化を主眼とすべきか」を悩み、稲盛和夫氏に質問している経営

問答があります。

 稲盛和夫氏は、その経営者に対して、「今後経常利益率が10%に達

して、更に少しずつ上昇するかどうかで判断すべきだ」と説いてい

ます。経費の伸びが売上高の伸びよりも低ければ、結果的に経常利

益率は伸びていきます。そのような状態になっているか、月次で試

算表をよく確認していけば良い、利益が減ってくれば事業拡大に

ブレーキをかけることをすべきだと仰っています。

 毎月損益計算書を見て経常利益を確認する、そしてその状況に合

わせて対策を講じる、ということを、京セラでは注意深く行ってき

たのだと感じます。稲盛和夫氏の会計重視の姿勢、経営の判断材料

として損益計算書を捉えてきたことが窺える問答だと思います。

 経常利益率の適正値は業種や各企業で異なると思いますが、自社

の損益計算書を毎月確認する際には経常利益を必ずチェックして

いただき、現状把握と今後の企業経営に活用していただけたらと

思います。


(2023年6月あがたグローバル経営情報マガジンvol.90 「試算表を読みこなすための経営指標(基礎編)」に掲載)

執筆者

小林 藤子Fujiko Kobayashi

マネージャー・中小企業診断士

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