「生産性分析」とは、「企業が付加価値を生み出すために、自社の経営資源を有効活用できているか否か」を測る分析手法でした。
生産性分析の具体的な事例としては、「一人当たり売上高(売上高÷従業員数)」、「㎡当たり付加価値(付加価値÷店舗面積)」など、小さな単位当たりの業績を把握するもので、「〇〇当たり△△」というイメージです。
また、「機械1台当たり製造数量(製造数量÷製造機械台数)」、「客室稼働率(稼働客室÷全客室数)」など、『試算表』には表れない現場の数値を、小さな単位当たりで算出する手法も考えられます。
つまり、売上高や付加価値、製造数量や稼働率の増減に対し、人件費や従業員数、あるいは機械や車両などの購入額が、適正量であるか否か、効率性の動向はどうか、を計る手法であるといえます。
業績が低迷しているときに、毎月の『試算表』の数値や推移を眺めているだけでは、業績改善の方向性を示すことはできません。
業績改善のスタートは、「分ける(分解する)」ことです。
例えば、宿泊業で売上高が減少しているとき、1部屋当たりの客単価が減少しているのか、宿泊人数が減少しているのか、食事付きプランの選択が減少しているのか、高額の客室稼働が落ちているのか、様々な形に「分けて」、売上高減少の要因を探ることが重要です。
「分ける」ことで、より具体的な改善の一手を練ることができます。
また過去分析だけでなく、今後の企業の数値目標を検討する場合や、新店舗の出店を検討する等の場面でも、生産性分析の手法は威力を発揮します。ポイントは、「単位当たりの生産性」を減少させることなく、企業を成長・拡大させることができるか否かを計ることといえます。
生産性分析の活用に当たり、経営面から留意すべき事項を付け加えたいと思います。
経営者としては、「少ない投資で、最大の成果を上げたい」と考えることは重要な視点であるといえます。つまり経営者は、最小限の人数で、最小限の設備投資で、売上(粗利益)に見合った給与負担で、と考えて経営判断を行います。
一方、現場の従業員は、「無いこと」、「少ないこと」に常に不満を持っています。つまり、設備が不十分であること、人が足りないことなどへの不満です。
そのような状況下で、「時間当たり生産性」、「一人当たり生産性」を声高に進めると、残業時間の隠蔽を誘発する可能性や、指摘されない数字を作ろうとの不正行為が成される可能性もあり、留意が必要です。
また、昨今の残業規制対策や有給休暇の取得にも十分な注意を払う必要があります。
「全員で売上高を上げましょう」という大括りな目標ではなく、「トラック1台当たりの積載率を上げましょう」など、関係者全員で取り組める具体的な目標を設定することが重要です。
「小さな成功体験」を積み重ねながら、従業員の皆さんのモチベーション向上につなげる活動を進めていただくことを願っています。
(2023年7月あがたグローバル経営情報マガジンvol.97 「試算表を読みこなすための経営指標(基礎編)」に掲載)