今回から借入金に関連した経営指標の解説に移ります。
借入金の返済原資となる金額は、どのように計算すれば良いでしょうか。
借入金の返済原資となるのは現金及び預金(キャッシュ)です。キャッシュフロー計算書を作成して返済原資となるフリーキャッシュフローを計算することで、どのようにキャッシュを生み出したかを正確に知ることができます。
しかしながら、毎月作成している試算表のうち損益計算書のみを使って、簡易的に知る方法があります。それが、「当期純利益+減価償却費」という計算方法です。当期純利益は法人税等を支払った後の利益です。それに減価償却費を足し戻すのです。
損益計算書から簡易的に返済原資の計算をすることができるため、実務の場面では活用されている方も多いのではないかと思います。
当期純利益は損益計算書上の特別損益を加味することになるため、より経常的な実力を計算したい場合は、「経常利益-法人税等+減価償却費」により計算するケースもあります。
経営コンサルタントの小宮一慶氏は、著書の『「1秒!」で財務諸表を読む方法【実践編】』(東洋経済新報社)の中で、「当期純利益+減価償却費」をキャッシュフローの実力値であると述べています。
企業が稼げるキャッシュフローの実力値をまずは知ること、そして「借入金(運転資金を除く)÷(当期純利益+減価償却費)」により簡易的な返済年数を計算することで、現在の利益が継続すると仮定した場合に、現在の借入金を何年で返済できるかが見えてきます。
では、返済年数はどのくらいが妥当でしょうか。この質問は、お客様からいただくことが多々あります。現在、金融機関から運転資金を借りる場合は概ね5年から7年以内、設備資金を借りる場合は概ね10年から15年以内の借入期間が多いと思います。上段により計算した返済年数が借入期間を大幅に超えるようであれば、キャッシュフローの実力値をもっと高める必要があります。
貴社のキャッシュフローの実力値をまずは知った上で、現在の借入金とのバランスを確認したり、将来への投資も含めて適切にキャッシュを使っているかも併せてチェックができると良いと思います。
次回は、借入金月商倍率についてご説明したいと思います。