「税務トピックスQ&A 2024年3月号」掲載
Q.当社はインボイス制度の基本的な対応は行えていると思いますが、制度開始後に公表された情報で請求書等の記載事項や保存事項を中心に留意すべき点を教えてください。
A.■受領した適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合の対応
売手から受領した適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合、売手から修正した適格請求書等の交付を受ける必要があり、原則として買手側で適格請求書等に追記や修正を行うことは認められていません。
ただし、買手が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、適格請求書発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当しますので、買手において適格請求書等の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者に確認を求めることも認められます。
この際、相互に関連する複数の書類により、仕入明細書等を作成することも可能であることから、受領した適格請求書等と関連性を明確にした別の書類として修正した事項を明示したものを作成し、当該修正事項について売手の確認を受けたものを保存することも認められます。
■適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用可否
適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、インボイス制度開始から3年間は80%、その後の3年間は50%控除が可能な経過措置が設けられています。
当該経過措置の対象は適格請求書発行事業者以外の者に限られていないため、適格請求書発行事業者から受領した請求書等が適格請求書等の記載事項を満たしていない場合などにも適用することが可能です。
■従業員名が記載された適格簡易請求書での仕入税額控除
従業員が事業に必要なものとして購入した消耗品等の代金を会社負担とする場合には、会社が負担すべき費用を従業員から立替払いを受けたことになります。原則として、本来宛名の記載を求められない適格簡易請求書であっても、仕入税額控除を行う事業者以外の者の氏名又は名称が記載されている場合には、当該適格簡易請求書をそのまま受領し保存したとしても、これをもって仕入税額控除を行うことはできません。
しかしながら、当該従業員が会社に所属していることが明らかとなる従業員名簿等の保存が併せて行われているのであれば、適格簡易請求書と従業員名簿等の保存をもって、請求書等の保存要件を満たすこととして、仕入税額控除の適用が可能です。
■適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存
継続的な役務提供に係る課税仕入れについて、書面での適格請求書は交付されず、取引先が指定したホームページ上のマイページ等にログインし、契約ごとに電磁的記録をダウンロードするケースがあります。適格請求書に係る電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためにその電磁的記録をそのまま保存しようとするときは、電子帳簿保存法に準じた方法により保存することとされています。
電子帳簿保存法では、ECサイトで物品購入したときに当該ECサイト上でその領収書等データをダウンロードすることができる場合で、領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存しなくても差し支えないこととされています。当該取り扱いはECサイト提供事業者において一定の要件を確保している場合で、当該領収書等データが各税法に定められた保存期間が満了するまで随時確認可能である必要があります。
これは適格請求書に係る電磁的記録の保存においても同様のため、上記の要件を満たす場合は当該電磁的記録をダウンロードせずに、その保存があるものとして仕入税額控除の適用が可能です。