Q.当社は、海外子会社との取引が増えてきました。移転価格税制には注意したほうが良いと聞きます。どういうことでしょうか?
A.移転価格税制とは?
日本親会社が海外子会社等と棚卸資産などを取引する場合に、その取引価格をいくらに設定するかの問題があります。例えば、海外子会社がスタートアップ時期にあるために事業が軌道に乗るまでは、日本親会社が海外子会社へ販売する原材料等の取引価格を低く設定したり、逆に親会社が海外子会社から仕入れる製品の取引価格を高く設定したりして、海外子会社に一定の利益を留保させようとすることがあるかもしれません。あるいは、連結グループ全体で税引後利益を最大化するために税負担を軽減しようと、税率の低い海外子会社により多くの利益を配分するように取引価格を設定することがあるかもしれません。
企業は、納得すれば取引価格を自由に決めることができます。親子関係などの資本関係にある取引当事者であれば、なおさら容易に取引価格を決めることができます。日本親会社が海外子会社との間の取引価格を操作して、本来日本親会社が得べかりし利益を海外子会社へ付け替えているとすれば、我が国に納付される税額が減少してしまうため、我が国としては、これは看過できないことといえましょう。これを防止するための規定が『移転価格税制』です。
移転価格税制とは、50%以上の資本関係がある海外子会社等(国外関連者といいます。)との間で行った取引が、独立した企業間で通常の取引条件に従って取引する際に成立する価格(独立企業間価格といいます。)に基づいていない場合には、その取引は独立企業間価格よって取引したものとみなして課税所得計算を行おうとする制度です。
下図の具体例を用いて、ご説明します。