Q.移転価格税制の仕組みは理解できましたが、具体的にどのような場合で移転価格税制が問題となりますか?
A.海外子会社の利益率が高い場合
一般的に、海外子会社との取引に係る日本親会社の利益率が低く、その海外子会社の利益率の方が高い場合には、日本の税務当局に日本親会社の移転価格リスクが高いと判断されます。つまり、親会社の得べかりし利益が海外子会社に移転しているのではないかと見られるわけです。上記とは逆に、海外子会社との取引に係る日本親会社の利益率が高く、その海外子会社の利益率の方が低い場合には、海外の税務当局に海外子会社の移転価格リスクが高いと判断されます。つまり、海外子会社の得べかりし利益が日本親会社に移転しているのではないかと見られるわけです。
具体例を挙げてみましょう(下図)。製造業を営む日本法人A社は、円安による輸入コスト高騰のため、このままでは利益が出なくなる見込みでした。そこで、日本法人A社は、輸入コスト削減のために、今まで事業として行ってきた製造機能を海外子会社に移管し海外子会社に完成品を従前の顧客に販売させることにしました。A社は、製造機能移管後には、開発活動に特化することとし、自ら開発した技術(無形資産)を海外子会社に供与することとしました。数年後、海外子会社は、当初の目的通り製造機能が軌道に乗り、利益が出るようになりました。以前のまま日本で製造を行っていれば利益は見込めなかったところ、海外に製造移管したことにより、海外子会社において利益が出る結果となりました。