企業活動において、契約書や領収書などの書類を作成することは日常的な業務です。そして、これらの書類には「印紙税」という税金が課されることがあります。印紙税は、一定の要件を満たす文書に対して課税される日本国内における税制であり、事業者にとって、思わぬコストやリスクを伴うことがあります。
まず第一に、印紙税は「見落としやすいコスト」として企業に影響を与えます。例えば、請負契約書や金銭消費貸借契約書などに収入印紙を貼付する義務がありますが、その金額は契約金額に応じて数百円から数万円にもなることがあります。大量の契約書などを取り交わす企業にとっては、年間で数十万〜数百万円規模の負担になることも少なくありません。また、印紙税は「貼り忘れ」によって罰則が課されることも大きなリスクです。印紙の貼付が必要な文書に対してこれを怠った場合、過怠税として本来の印紙税額の3倍の納付が課されることがあります。この過怠税は法人税法上、損金不算入となるため、企業にとっては予期せぬ支出となり、特に中小企業にとっては大きな打撃です。
例えば、貼るべき印紙が2万円であったところを貼り忘れ、後日税務署に指摘されて6万円(3倍)を納付した場合、納付した6万円すべてが損金不算入となるため大きな税負担となります。
(印紙税法第20条、法人税法第55条)
さらに、印紙税の課税対象となる文書の範囲が複雑であることも問題です。たとえば、電子契約書などデジタルな文書には印紙税が課税されない一方で、紙で出力した場合は課税されるなど、文書の形式や記載内容によって判断が分かれます。そのため、常に最新の法令を把握しておく必要があり、人的コストや教育コストも無視できません。
一方で、企業が印紙税への対応を見直すことで、コスト削減や業務効率化につなげることも可能です。近年では、DXの普及によって、電子契約サービスなど、印紙税のかからない契約形態を選ぶ企業も増えています。これにより、印紙代だけでなく、契約書の郵送や保管にかかるコストも削減できます。
印紙税は企業にとって見落とされがちな税負担であり、適切な管理と対応が求められます。DX化を進めることで、印紙税の税務リスクを軽減しつつ、業務の効率化やコストの削減が可能です。印紙税に対する理解を深め、経営戦略の一環としてその対応を位置づけることが重要です。