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「アマゾン銀行の衝撃」

週刊ダイヤモンド2014年5月3日、10日合併号の産業レポートは、「アマゾンの法人融資サービス」でした。私はこのレポートを読んで、少なからぬ衝撃を受けました。それは、あのアマゾンが融資を始めたからではなく、アマゾンが採用する融資方法がとても鮮烈だったからです。

決算書不要のアマゾン融資
私が衝撃を受けた理由は「アマゾンは自分が行う融資に対して決算書を取らない」の一言に凝縮されます。私はこれまで、「決算書のない企業融資」ということは思いもよりませんでした。だからこそ、決算書は正しく作成されなければならないし、大切なものであると考えていました。
ところが、アマゾンでは融資についてその大切な決算書は不要だというのです。では、アマゾンは何を持って信用審査をするのか。アマゾンの判断根拠は、唯一自身の販売モールにおける商品の販売実績だけです。商品の販売状況から融資金額を決定し、その販売代金から融資金の返済を行います。これは決算書の財務的審査に重点を置く銀行の融資の弱点を見事にカバーしています。

決算書審査の問題点
銀行における融資では、決算書は必須です。決算書で会社の内容を見極めて、それを土台にして、与信限度と返済方法を決めていきます。どんなに優秀なモノを作っていても決算書がなければ、そもそも融資の土俵にも登りません。「決算書の内容を判断して、融資を行う」というのは、銀行においては疑うことのない常識です。しかし、この決算書審査は次のような問題点を抱えています。
まず、決算書の正確性です。ほとんどの非上場企業は会計監査人の監査を受けていませんから、会社外の人間による決算書の正確性の担保はなされていません。決算書の正確性はもっぱら決算書を作成する経営者に依存します。大多数の経営者は真面目に決算書を作成していると思ってはいても、実際に会社に入って、数字の裏付けをとっているわけではない銀行員は決算書の数値の正確性について、一抹の不安を抱えているのが実情です。
銀行はまったく数字の裏付けをとれないかというと、そうでもありません。銀行口座における企業の資金決済状況を見れば、大よその実態はつかめるからです。ただ、それが可能なのは、資金決済を集中しているメイン銀行だけです。これがかつて言われていたメインバンクのモニタリング機能の中核になります。メイン銀行は決算書審査に加え、資金決済のモニタリングを通じて企業実態を把握できている。だから、メインが企業融資を継続している限り、その会社は問題ないというものです。しかし、最近は、力関係が企業優位に変化していることや、銀行員もそうしたことに力を注がなくなってきていることから、銀行のモニタリング機能は低下しているといわれています。
もう一つの決算書審査の問題点は、決算書に表現されている数字は、あくまで過去の実績であり、融資金の返済が要請される将来時点での確実性を保証するものではないということです。過去の実績が悪くても、現在の取扱商品が売れて、将来返済できる力があれば、融資できますし、逆に過去の実績が良くても、現在の商品の売れ行きが悪ければ、融資は妥当ではありません。そうしたことを決算書から読み取ることは簡単なことではありません。このような将来の不確実性をカバーするため、銀行では担保や保証を要求します。資金を借りる企業からすれば、担保や保証を入れるには面倒な手続きや余分な経費が必要になりますから、なければないに越したことはありません。

アマゾン型融資の教訓
銀行員は上記のような不安を抱えながら、決算書審査に基づく融資を行っています。決算書を不要とするアマゾン型融資は、こうした銀行の悩みを見事に解決しています。問題なのは、リアルタイムの企業の実態です。アマゾンモールに出品している商品の販売状況を見れば、企業の現在の本当の実力がつかめます。決済もアマゾンの口座を通す限り、資金トレースができますから、返済財源の確保も容易です。アマゾンに出品している商品が実質的に担保になりますから、不動産担保や保証人も不要です。
アマゾン型融資で対応可能なのはアマゾンに出品した商品関連の運転資金だけであり、今後の企業の浮沈がかかる設備投資などの大型融資には向いていません。したがって、アマゾン型融資が企業金融の主流となることはありません。ただ、このアマゾン型融資が銀行型融資の脆弱性を補い、しかも、顧客の利便性の向上に寄与していることは間違いありません。銀行にとって、アマゾン型融資が一つの脅威となることは事実でしょう。また、銀行に対して、決算書の財務的数値をモノと関連して裏付けることの重要性を再認識させているともいえます。

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