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「実効性のある数値目標とは」

 どのような会社でも目標設定は重要です。「良い会社にする」とか「社会的に意義のある会社になる」、というような長期的に実現しようとする理想的な目標も必要ですが、利益を追求しなければならない会社にあっては、数値目標は欠かせません。そして、数値目標はより実効性の高いものでなければなりません。最近、話題になった政府の目標設定の変更に、私はその実効性の観点から疑問を持つものがありました。

プライマリーバランスからGDP比率に
我が国では、国家債務のGDP比率は200%を優に超え、財政再建は長い間ずっと重大な政策課題として存在し続けています。これまで政府が財政再建目標としてきたのは2020年度におけるプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化です。プライマリーバランスを黒字化すれば、これまで何十年と増加し続けてきた債務の増加が止まります。その後、プライマリーバランスの黒字を継続すれば、債務は減少し、国家債務のGDP比率の減少につながっていくと考えられます。
しかし、現在の政治状況は税収増加の切り札となる消費税増税の2度の延期や、高齢化の進展による福祉予算の増大に加え、2020年の東京五輪を見据えた公共投資の拡大も見込まれ、2020年度のプライマリーバランスの黒字化はほとんど夢物語と言ってよい状況です。そこで出てきたのが、目標設定をプライマリーバランスから国家債務のGDP比率に変えようという動きです。
国家債務の軽重をGDP比率で判断するのだとしたら、目標としてGDP比率を採用してもいいのではないかと思われるかもしれませんが、そう簡単に割り切ることはできません。その政治的意図は別にして、純粋に数値目標としての実効性を考えたとき、国家債務のGDP比率という目標はプライマリーバランスに比べて格段に劣後するといわざるをえません。

コントロール可能かどうか
目標設定の数値は自分がコントロール可能なものであるほど、効果的になります。これまで目標とされてきたプライマリーバランスは、基本的に歳入から歳出を控除して算出されます。歳入も歳出も政府の直接のコントロール下にありますから、プライマリーバランスを目標にしておけば、目標未達の時に、外部への責任転嫁が難しくなります。
ところが、債務GDP比率は分子の国家債務は政府の管理下にありますが、分母のGDPは政府が直接コントロールできるものではありません。数値目標を設定し、目標が未達の場合、いくらでも言い訳ができるようになってしまいます。たとえば、中国経済や米国経済の不調によりGDPが伸びないというような、自己責任ではない外部要因に責任転嫁することが可能です。
最終的には債務GDP 比率の引き下げが目標となりますが、そのためには将来における合理的なGDP数値を予測し、それに適合する国家債務予測をたて、そこから導き出されるプライマリーバランスを数値目標とするのが実効性の高い目標だと言えます。

企業の目標設定
企業の目標設定にも同様な視点が必要です。たとえば、業界におけるシェア10%を達成しようとするとき、そのシェア10%をそのまま会社の数値目標とするのは余り好ましいとはいえません。業界全体の売上を予想して、そこに10%を掛けた数値の方が会社の売上目標としてふさわしいでしょう。
数値目標はできるだけブレークダウンして、自分のコントロール可能なもので構成した方が実効性の高い目標となるのです。

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