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コラム

「倒産耐久力は貸借対照表の対角線で判断する」

 決算書を受け取ったときに、まずどこに着目するのかは、受け取る人の経験に対応して身についた癖があるようです。私は銀行での融資業務を出発点として社会人生活を始めたので、良きにつけ悪しきにつけ、融資を行う銀行員特有の決算書の見方が染みついているように思います。
銀行の企業文化も昔とはだいぶ変わってきたようで、最近の銀行は決算書から前向きの融資の種をどのように発掘するかという視点が重視されているようです。しかし、私が働いている頃の銀行では、融資担当者が最も恐れるのは融資先の貸倒であり、そのため、決算書を受け取ったときに、真っ先に着目するのは倒産しない会社かどうかを見極めることでした。いわば、「倒産に対する耐久力」にすぐ目が行ってしまうのです。ですから、分析の中心は損益計算書より貸借対照表となり、さらにその中でも流動性と自己資本比率の二つに注目することになります。

当面の支払能力を判断する流動性
倒産とは、一般的に、契約した債務の支払いを期日通りに行えない状況(債務不履行)を言います。債務の支払いは原則的に現金で行いますから、現金及び現金に近い資産(主として流動資産にあります)が、短期に支払期日が来る債務(主として流動負債にあります)と比べてどのくらいあるかが重要になります。現金や市場性のある有価証券などの流動資産が、流動負債に比べて豊富にあれば(こうした状況を「流動性が高い」といいます)、債務不履行になる確率は低いと判断できます。
ただ、流動性だけで倒産耐久力を判断することはできません。というのは、現金及び現金類似資産を生み出した原因が重要になるからです。たとえば、借入金や社債などの有利子負債により生じた現金で流動性を高く保っていれば、その流動性は危険です。有利子負債には償還期日がありますし、場合によっては期日以前に債権者に返済しなければならない場合もでてくるからです。有利子負債の返済を迫られたら、流動性は一気に落ち込み、資金繰りに詰まります。

流動性の源泉を判断する自己資本比率
そこで出てくるのが流動性を生み出した原因を明確にする自己資本比率(自己資本÷総資産)です。流動性を支える現金の発生原因が債権者に返済不要の自己資本であれば、その流動性には永続性があると判断できます。自己資本は会社外部からの資金流入である払込資本と、会社が事業を行うことにより生み出した利益の蓄積である内部留保からなります。内部留保の比率が高いほど、会社自身が生み出す現金創造力が高いということになりますから、安定性は高まります。

重要なのは貸借対照表の対角線
つまり、倒産耐久力を判断するのは貸借対照表の左上を中心に表示される現金及び現金類似資産と右下に表示される純資産の内部留保になります。倒産耐久力という点では貸借対照表の左上から右下に流れる対角線が重要になるのです。資産のほとんどが現金及び現金類似資産で、その発生原因が内部留保という会社は倒産耐久力という点では申し分のない会社ということになります。

銀行のジレンマ
そういう会社はつぶれにくい会社であることは間違いありませんが、だからといって、それが即、いい会社というわけではありません。というのは、会社が生んだ利益を現金で持っているということは、成長を生む資産に利益を再投資できずにいるということになるからです。成長性という点では明らかにマイナスです。
また、そういう会社は現金が豊富ですから、投資をしようとするとき銀行借入に頼らなくてもいいということも銀行にとっては悩みの種です。貸したい先ほど借りたくないというジレンマに陥ります。こうした融通の利かない融資姿勢が銀行批判を招く一因となっているのですが、最近の状況を見ていると、銀行がそこから脱却することはそれほど簡単なことではなさそうです。

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