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「持分法の経営的意味合い」

2018/04/02

 先日、三菱商事が1200億円を投じて、TOB(株式公開買い付け)により三菱自動車の株式を取得し、出資比率を約2割に高め、持分法適用会社にするという報道がなされました。
今回の三菱商事の株式取得の狙いは何か、会計的側面から考えてみたいと思います。

一般会社と関連会社

企業が他の会社の株式を持つ理由は大きく二つに分けられます。一つは配当や値上がり益を期待する投資目的であり、もう一つは相手の会社の経営に関与してグループ全体としての収益を極大化しようとする事業目的です。ここでは、投資目的の会社を一般会社、事業目的の会社を関係会社と呼ぶこととします。関係会社には関連会社と子会社の2種類があります。会計では、子会社になると親会社と一体と考えますが、本稿でテーマとする関連会社は子会社ほどの経営の同一性はなく、親会社は関連会社の経営に関与するといった関係になります。
関連会社の定義には、いろいろなバリエーションがありますが、原則的には、持株比率をベースにして20%以上あれば関連会社となります(子会社の場合は原則的に50%超が判断基準になります)。関連会社になると、会計上は持分法が適用されます。
今回の株式取得で、三菱商事は三菱自動車に対する出資比率を引き上げ、一般会社から関連会社にします。一般会社と関連会社で、連結財務諸表の表示がどのように変わるか見てみます(以下は、業績が悪化して減損会計が適用される場合を除いた、通常状態の場合における表示の説明になります)。

時価評価か持分法か

一般会社でも関連会社でも、取得している株式は連結貸借対照表では固定資産の投資有価証券に含まれます。ただ、違うのは株式の評価方法です。一般会社は、上場株式の場合はマーケットプライスで時価評価されます。つまり、期末株価が取得原価を超えている場合は評価益が計上されます。ただ、この評価益は連結損益計算書には反映されずに、連結貸借対照表の純資産に税効果分を除いて加算されます。逆に評価損があれば、税効果分を除いて純資産から減算されます。また、連結損益計算書には、一般会社からの配当金が営業外収益の受取配当金として計上されます。
一方、関連会社になると、たとえその会社の株式が上場されていてもマーケットプライスで評価するのではなく、関連会社の事業成績を連結財務諸表に取り込む持分法が適用されます。つまり、関連会社の当期純利益の持分相当額が連結貸借対照表の投資有価証券勘定に加算されると同時に、連結損益計算書の営業外収益における「持分法による投資利益」として計上されます。逆に関連会社が損失になると、当期純損失の持分相当額が投資有価証券から減算され、連結損益計算書の営業外費用における「持分法による投資損失」が計上されます。

経営的意味

一般会社は経営には関与していないのですから、その株式は原則的に相手方の意向に関係なく、こちらの都合でいつでも処分可能と考えられます。ですから、処分価格としてのマーケットプライスを評価方法として採用します。一方、関連会社になれば経営に関与し、事業にある程度責任を持つことになり、株式は長期保有が前提となりますから、その時々のマーケットプライスで評価するのは適当ではありません。経営に参加してグループ全体の事業成績を引き上げようとするのですから、関連会社の事業成績を連結財務諸表に取り込むのが妥当だということになります。
つまり、三菱商事は三菱自動車を関連会社とすることにより、自らが関与できない三菱自動車株式の市場価格の変動が連結財務諸表に与える影響から解放され、自らが関与する事業成績を連結財務諸表に取り込めるようになります。これにより自分の連結財務諸表の管理可能性が高まるといえるでしょう。無論、それはいいことばかりではなく、関連会社の経営が悪化すれば、相応の責任が発生することになります。

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