中小企業からグローバル企業まであらゆる経営課題に解決策を

「子会社と関連会社の経営責任の違い」

2018/05/01

 前回は一般会社と持分法が適用される関連会社の違いを説明しました。今回は子会社と関連会社の相違点を取り上げます。
 会計上は、子会社と関連会社を合わせて関係会社と呼びます。同じ関係会社ですが、子会社と関連会社の違いは、言葉では次のように表現されます。子会社は親会社に「支配されている会社」であり、関連会社は親会社の「影響力のある会社」です。子会社になるか関連会社になるかは他の要素も加味しますが、親会社の持株比率をベースにして、原則的には50%超が子会社、20%以上が関連会社になります。
関係会社になると、連結財務諸表では、親会社のグループ会社として関係会社の業績を取り込んで表示します。ただ、その表示の方法が子会社と関連会社で次のように異なります。

連結貸借対照表
 子会社は親会社と経営的に一体と考えます。ですから、親会社が所有している株式の価額を表示するのではなく、子会社の資産、負債は親会社の資産、負債と合算して表示します。100%子会社であれば、単純合算だけで構わないのですが、持株比率が100%に満たない子会社では、単純合算では取り込みすぎになってしまいます。そこで、親会社以外の持分を「非支配株主持分」として純資産の部で控除する形を取ります。
 一方、関連会社は親会社と一体とまでは考えませんから、資産、負債を合算するのではなく、親会社が所有している株式の価額を固定資産の投資有価証券に含めて表示します。

連結損益計算書
 ここでも、子会社は親会社と一体ですから、子会社の売上以下損益計算書項目は親会社と合算されます。これだと、連結貸借対照表と同様に持株比率が100%に満たない場合は利益を取り込みすぎになりますから、連結損益計算書の当期純利益から「非支配株主に帰属する当期純利益」を控除して「親会社に帰属する当期純利益」を算定します。
 一方、関連会社の場合は、売上以下の個別項目の合算ではなく、関連会社の当期純利益のうちの親会社の持分相当額を連結損益計算書の営業外収益における「持分法による投資利益」として計上します。

100%載せてから控除する
 上記の子会社の連結手法を「全部連結」、関連会社の連結手法を「持分法」といいます。全部連結も持分法も、連結財務諸表において、子会社と関連会社の業績のうちの親会社持分相当額を表示することを目的としています。ただ、両者の違いは、子会社ではその内容を親会社と一体として表示するために、一旦100%の子会社業績を載せてから、最後に親会社持分以外の持分を控除するのに対し、関連会社では最初から親会社持分相当額を該当箇所に表示するところにあります。

経営責任の違い
 この相違は単なる表示の問題ではなく、以下のように経営において重大な違いを生み出します。
連結財務諸表の債務には関連会社の債務は含まれていませんが、子会社の債務は含まれています。連結財務諸表は親会社の株主に対する経営成績の開示です。そこにおいて、子会社の債務は親会社の債務と同じ位置づけになっていると表明したことになります。つまり、会計的には親会社は子会社の債務についても返済義務を負っていると解釈されることになります。
 ただ、これはあくまで"会計的"な意味合いです。法律的には「株主有限責任」の原則から、親会社は株主として出資金額を超える債務の返済にまで及ばないという考え方もあります。実務的には、親会社が子会社の債務負担をどこまで負うかという問題はケースバイケースということになるでしょう。
 子会社と関連会社の違いという点においては、親会社の連結財務諸表に債務が表示されるか否かということが決定的に重要です。会計的には、債務が表示される子会社は親会社の経営責任が及ぶ会社であり、表示されない関連会社は経営責任が及ばないと考えることができるからです。その結果、子会社と関連会社で、親会社の経営への関与の仕方も異なってくることになります。

執筆者

最新の記事