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「社外取締役の数は多ければいいのか」

 企業のガバナンス強化の柱の一つとして、社外取締役の人数の増加が注目を集めています。日本では従来、生え抜きの社員から昇進した社内取締役だけで取締役会を構成することが多かったことから、個々の取締役がトップである社長や会長の意向に逆らうことが難しく、議論が内向きになり、発展性に欠けると同時に、社会的公正さを逸脱するケースが散見されました。そこで、そうした弊害を除去するために、上場企業ではここ数年来、取締役会に社外取締役を一定数入れることが義務づけられてきました。

社外取締役が8割を超える会社も
 その意図するところは分かります。会社内部の人間だけの会合に、外部からの知見を入れることで、議論は活性化されると同時に会社内の論理だけでなく社会の論理が反映されることが期待できます。しかし、最近の動きを見ていると、社外取締役の数を増やしさえすれば、ガバナンスは向上すると短絡的に考えているような風潮があり、気になります。
 先日は、東芝が12人の取締役のうち、社外取締役を7人から10人に増やし、うち4人が外国人となる選任案を定時株主総会で可決したとの報道がなされました。その結果、社外取締役の比率がなんと8割を超えることになりました。そこまですることが本当に会社にとって良いことなのか、考えてみる必要があると思います。

定性的情報が重要
 取締役会は会社の成長や発展のための方策も決定しなければなりません。将来の方向性を考えるとき、過去の実績や将来予想の定量的数値は当然重要ですが、日本ではまだまだ個々の社員の能力、社風や業界の特性といった個別的事情が大きい要素を占めます。無論、社外取締役がそうした情報収集に努力するとともに、会社側からの積極的情報提供が必要なことは当然です。それでも、常に社内にいるわけではない社外取締役は社内取締役と同等にそうした情報を共有することは不可能です。
 会社の個性、人事及び業界の事情をしっかりつかんでおかないと、将来の的確な成長戦略を描くことはできません。倫理観が高く、すべての業界で通用する卓越した経営手腕を持ちながら、それでいて、会社や業界特有の事情にもよく分かっているような社外取締役が多数いれば別ですが、そんなスーパーマンのような社外取締役はそう多くはいません。
 また、社外取締役だから、トップにしっかり意見できるかというと、日産やLIXILの事例を見ればわかる通り、必ずしもそうとは言い切れません。
 もし、社外取締役の数を増やし社外取締役が取締役会の決定権を握るとしたら、社外取締役は会社の内情に通じていないので、結局、会社のことを熟知している経営トップの独走態勢が強まるといった懸念も生じます。場合によっては、トップが自分の意のままになる社外取締役を連れてきて、取締役会を支配するといった事態も想定されないわけではありません。

社内体制整備が先決
 そんなことを考えると、取締役会に一定数の社外取締役を入れることは必要ですが、社外取締役の数を大幅に増やし、取締役会の中枢を社外取締役に任せるというのは、個々の会社の事情にもよりますが、日本の多くの会社の実情にそぐわないような気がしてなりません。企業のガバナンスのためには、いたずらに社外取締役の増加に頼るのではなく、トップをはじめとした社内体制の整備が先決なような気がします。

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