中小企業からグローバル企業まであらゆる経営課題に解決策を
2019/04/01
法人企業統計によると、2017年度の企業(金融・保険業を除く全産業)の利益剰余金、いわゆる内部留保は446兆円で、内部留保を 中核にした自己資本比率は41.7%と過去最高に積み上がっています。内部留保は貸借対照表の貸方の話ですが、それに対応する借方には現金が222兆円と、これもまた過去最高の水準にあります。 資金の用途として最も望ましいのは、将来の成長のための設備投資です。しかし、少子高齢化で人...
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公認会計士井口秀昭のウェブコラム
2019/01/07
経済誌は日産のゴーン前会長の記事でもちきりです。昨日まで日産の業績をV字回復させた救世主としてもてはやされていただけに、そのカリスマ経営者が一夜にして被告人に転落するのですから、世間の注目を浴びるのも無理もありません。 個人的には、正式な組織決定を経ていない、キャッシュの支払いを退職後に持ち越された金額の不記載が、直接の逮捕容疑である有価証券報告書の虚偽記載に該当するのかということに疑念を持って...
2018/09/01
司法取引とは容疑者や被告が自分以外の犯罪について捜査機関に協力する見返りに、自分自身の求刑を軽くしたり、起訴を見送ってもらう司法上の取引です。アメリカのドラマや映画でよく見るものですが、それが日本でもこの6月から適用開始されました。 その日本版司法取引の第1号がこのほど明らかになったのですが、その内容はやや意外なものであり、日本人の組織と個人の関係を考え直すものであったように思います。
2018/07/02
スルガ銀行が不正融資問題で揺れています。シェアハウス投資に対する融資で、売買契約書の物件価格の水増しや通帳コピーの改竄などの不正行為の実施が疑われています。詳細は第三者委員会の調査で明らかにされるでしょうが、状況からすれば、かなり疑念が濃いと言わざるを得ないでしょう。 この事件に関連して、異なる観点から、次の二つのことを指摘したいと思います。
2018/06/01
従来、日本の会社の大半は従業員に副業を認めていませんでした。従業員は所属する企業に心身ともに忠誠を尽くし、企業はその見返りに退職金や年金などを含めて終身の雇用を保証するというのが日本企業のあるべき姿とされてきました。ですから、副業などもってのほかだったのです。 しかし、ここにきて副業を認めようという動きが出てきています。副業の範囲や認め方に程度の差はありますが、報道によれば、ソフトバンク、コニカ...
2018/02/09
自然科学では原因と結果が一直線につながり、悪い結果の原因は当然に特定されます。しかし、社会科学は多様な原因が絡み合いながら、結果が導き出されますから、原因を短絡的に一つに特定するのは危険です。企業不祥事の対応にもそんな複線的な思考が必要ではないかと感じています。
2017/09/04
どのような会社でも目標設定は重要です。「良い会社にする」とか「社会的に意義のある会社になる」、というような長期的に実現しようとする理想的な目標も必要ですが、利益を追求しなければならない会社にあっては、数値目標は欠かせません。そして、数値目標はより実効性の高いものでなければなりません。最近、話題になった政府の目標設定の変更に、私はその実効性の観点から疑問を持つものがありました。
2017/06/02
最近、同業者間での業務提携の発表が相次いでいます。特に物流部門における提携が目立ちます。味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の食品メーカー4社は国内物流事業で提携しましたし、キリンビールとアサヒビールも共同輸送を拡大しています。
2016/12/01
小池百合子東京都知事の誕生で、豊洲への市場移転問題がにわかに騒がしくなってきました。これを政治的に読み解くのは、とても私の手に余りますが、投資の意思決定の問題として会計、ファイナンス論の見地から考えるのは経営的に意味のあることだと思います。
2016/11/01
誰しもがいつも期待通りの結果が残せるわけではなく、やむをえず不本意な結果に終わることがあります。ビジネスではそうしたとき、不本意な結果をどのように反省し、次に活かすかが重要です。先般の日銀の「総括的検証」はその面から言うと不十分であったと言わざるを得ません。 日銀と一般会社では目的や結果責任の取り方などに大きな違いがありますが、成績が残せなかったときの総括の仕方として、普通の会社でも参考になる点...
2016/08/01
東証の指導もあり、上場企業で社外取締役が増加しています。これまで日本企業の取締役は社内の生え抜きがほとんどで、意思決定が内向きになり過ぎると、かねて批判されていました。そこで、社外取締役の数を増やし、取締役会に社外の多様な意見を反映させようというのです。 既に導入済みだった一部の先進的大会社を除き、日本の大部分の会社の社外取締役は会社内部の必然性からではなく、外部からの強制によって生まれたもので...
2016/02/01
昨年は東芝の不適切会計、VWの排ガス規制問題など企業不祥事が相次いだ年でした。事件を起こした東芝やVWは、その国の名門企業と言われていた会社だけに大きな衝撃を与えました。それと同時に我が国では、上場企業のガバナンス(統治)体制の改革も大きなテーマでした。取締役の大多数が社内出身者であることが、不祥事発生の一因になっているのではないかというのです。一般株主、あるいは社会からの視点を会社の意思決定...
2016/01/05
新年を迎えましたが、GDP(国内総生産)は低迷し、アベノミクスも一種の曲がり角を迎えているように思います。本来、民間企業が独自に決めるべき設備投資や賃上げについて、政府が企業に要請するという官民対話に政府の焦りが感じられます。というのは、こうした要請は市場と政府のどちらが賢いかという、古くからある既に決着済みの問題を蒸し返しているに過ぎないからです。どんなに優秀な政治家や官僚でも、市場で行われ...
2015/12/01
IFRS(国際会計基準)や米国会計基準の影響を受け、平成23年から日本でも上場企業に対して「包括利益」が導入されました。導入前にはその影響について盛んに議論されていましたが、導入後は新聞や経済誌でも、ほとんど話題に上ることはなく、従来通りの損益計算書ベースの利益分析に変わりはなく、包括利益はやや置き去りにされた感があります。ただ、包括利益は経営者の経営責任概念について、従来の利益とは大きく異な...
2015/08/03
最近、上場企業の財務指標としてROE(自己資本利益率)がとても注目されています。ROEは当期純利益を自己資本で割って算出し、株主から預かった資本の効率性を表現する指標ですから、株主が注目するのは当然です。「ROEが低い会社の取締役選任決議案に反対する」とか、「ROE10%以上を求める」といった記事が頻繁に見受けられます。経営者がROE向上に熱心になるのは当然ですが、ROEだけに執着するのは少し...
2015/05/01
東証や政府が積極的に推進していることもあり、上場企業で社外取締役の導入が進んでいます。社外取締役が入ることにより、どのように会社は変わるのでしょう。
2015/02/02
日銀の追加金融緩和が強力に進められています。金融緩和が企業に及ぼす影響は一様ではありません。金融緩和に伴う円安で交易条件が好転し潤う輸出業者がある一方、原材料が高くなり困っている輸入業者も増えています。目立たないのですが、その他に苦しくなる業界の一つに銀行があります。
2015/01/05
総理も日銀総裁も「デフレマインドの払拭」を声高に訴えます。ことほどさように、近年はデフレマインドが諸悪の根源のように言われますが、私はビジネスにおいては、デフレマインドは必須の思考方法だと思っています。
2014/11/04
日本の会社は現金預金を貯めすぎると言われています。日銀が発表した資金循環統計によると、企業が保有する現預金の14年3月末の残高は232兆円と過去最高を更新しました。会社が眠らせている現金預金を積極的に投資に使うか、あるいは株主に還元すれば、日本経済は活性化するというのです。 現在、預金利率はほとんどゼロで、現預金を積み増すことの収益的メリットはありません。会社内で成長のための投資に回せない現...
2014/10/01
全国銀行協会と日本商工会議所などが、強制力のない自主ルールとして「経営者保証に関するガイドライン」を本年2月に策定しました。このガイドラインは銀行借入に付随する経営者(社長)個人保証の解除を目的としたものですが、我が国で長い間慣習として定着してきた観のある社長個人保証が減少していくのか注目されます。