新年を迎えましたが、GDP(国内総生産)は低迷し、アベノミクスも一種の曲がり角を迎えているように思います。本来、民間企業が独自に決めるべき設備投資や賃上げについて、政府が企業に要請するという官民対話に政府の焦りが感じられます。
というのは、こうした要請は市場と政府のどちらが賢いかという、古くからある既に決着済みの問題を蒸し返しているに過ぎないからです。どんなに優秀な政治家や官僚でも、市場で行われる資源配分以上に賢い選択はできないというのが資本主義社会での結論です。政府が直接に介入し、市場とは異なる資源配分をしても、良い結果はえられないだろうというのがコンセンサスだったはずです。そんなことは、関係者は百も承知でしょう。それでも、民間企業にこうした要請をせざるを得ないところに、行き詰まり感が表現されているように思います。
「デフレを止めるために金融緩和を行い、さらなる財政支出を行うべきなのか、あるいは今でも膨大な財政赤字を抱えているのだから将来のインフレを予防するために国債残高の圧縮に努めるべきなのか。」こうした問題についても、経済学は有効な処方箋を示すことができていません。
そうした中で、企業経営はどうあるべきなのか、考えてみましょう。
キャッシュフローの充実
経営者としては政府が何とかしてくれるという甘えは捨て去るべきです。政府の対策により景気が回復するとか、業界が保護されるとか、そうした安易な期待に基づく決断先送りの経営は危険です。自分の身は自分で守るしかありません。
そのためには、まず自前のキャッシュフローの充実が求められます。在庫や売掛金はできるだけ圧縮して資金化を早めます。
また、遊休資産があれば処分すべきです。「今、売却すれば損が出る。現在、政府がデフレ対策を進めており、いずれインフレに転換するだろうから、そこまで資産の売却は待ちたい」などという先送りの判断はろくな結果をもたらしません。資産の値上がり期待など「絵に描いた餅」です。逆に、売却損が出るなら税金が圧縮できますから、キャッシュフロー的にはかえってプラスに作用します。安易なインフレ予想に基づき資産・負債を膨らませるのは得策とはいえません。
買われるうちが華
出光と昭和シェル、JXホールディングと東燃ゼネラルなど石油業界では経営統合の発表が相次いでいます。M&Aは大企業の専売特許ではありません。中堅・中小企業はオーナー企業がほとんどですから、M&Aというと及び腰になりがちです。しかし、過去の延長線上に未来を描ける時代は終わったと考えるべきでしょう。経済が伸びない停滞経済だからこそM&Aに活路を見出すのです。
前向きに発展するために他社と経営統合するということもあるでしょうし、後継者がいないから会社を売却してハッピーリタイアメントするというのも立派な選択肢です。「買われるうちが華」です。時が過ぎれば誰も買ってくれなくなります。
待てばいい時がくるなどという幻想に期待を寄せず、現実をしっかり見据えた早めの決断が会社と従業員を救います。