「経営トピックスQ&A 2025年7月号」掲載
Q.当社では現在、経営改善に取り組んでいるものの、厳しい外部環境等の影響もあり計画どおりに進んでいません。抜本的な見直しが必要であると感じています。経営改善・事業再生に対する国の支援策について教えてください。
A.コロナ禍においては「売上・受注の停滞、減少」への対応が大きな課題でした。直近では「求人難」「原材料高」「人件費・支払利息等の経費の増加」等、中小企業が直面する経営課題は複雑化しており、2024年の倒産件数は11年ぶりに1万件を超えました。政府の支援策も、これまでのコロナ対応型の資金繰り支援策は2025年3月までに終了し、コロナに限定しない経営改善・再生、成長促進も含めた支援策に移行しています。
また、経済産業省は、同月に「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」を取りまとめました。「早期相談に向けた取組強化」「事業再生支援の体制強化」「その他経営改善・事業再生に資する支援インフラの整備」の3点についての取り組み指針が示されており、「早期」に必要な支援を提供できるよう、金融機関等の支援体制を整備する内容となっています。
■経営改善のための資金繰り支援策
(1)「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)制度」
コロナ禍後の借換や資金調達に活用されていた経営改善サポート保証は、コロナ対応型が終了し「経営改善・再生支援型」に移行しました(限度額:2億8,000万円、保証料:0.3%、保証期間:15年以内、据置期間:3年以内)。この制度は、経営改善や事業再生の実行に必要な資金を信用保証協会の保証付き融資で支援するためのものです。利用にあたっては経営改善計画策定支援事業(405事業)等に基づき、経営改善計画を策定する必要があります。
(2)「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」
資本性ローンについても、コロナ対応に特化した制度は廃止され、従来の制度を拡充した「挑戦支援資本強化特別貸付」となりました(限度額:7,200万円[国民生活事業]・15億円[中小企業事業]、利率:0.50%~3.95%、返済期間:5年1ヵ月以上20年以内[期限一括償還])。この資本性ローンの特徴として、①返済が最長20年後の一括償還であること(月々は利払いのみで元金の返済は不要)、②利益に応じた利率であること(当期純利益がマイナスの場合の金利は0.50%、プラスの場合は最大で3.95%)、③無担保無保証であること、等があります。また、金融機関の資産査定上、この資本性ローンは自己資本とみなすことができるため、借入企業の債務者区分改善も期待できます。万が一、破産等の事態に陥った場合には、他の債務に対して償還順位が劣後するため、「資本性劣後ローン」とも呼ばれます。
■事業再生・再チャレンジの検討
自助努力による経営改善が難しい場合、抜本的な再生についての検討が必要ですが、経営状態が悪化すると事業継続が困難になる可能性が非常に高まります。中小企業庁は、中小企業活性化協議会への早期の相談を促すために「再チャレンジ事例集」を公表しています。私的整理と経営者保証ガイドラインを活用することで、会社の破産と経営者個人の破産・自宅売却を回避できた事例や、会社は破産したが事業は継続し、経営者個人の破産を回避できたケース等が紹介されています。
■まとめ
経営改善が計画どおり進んでいない場合には、自社の状況を正確に把握し、対応策を検討することが必要です。早期に検討をはじめることで、選択肢の幅は確実に広がります。経営改善・事業再生のための環境整備は国によって進められていますが、手元資金がないと、再生する前に資金繰りが破綻してしまう恐れもあります。まずは身近な専門家や取引金融機関に相談するのが望ましいのですが、ためらわれる場合には中小企業活性化協議会や、経営改善・事業再生に強い専門家に早期に相談してみることをお勧めします。