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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

「100億宣言」と中小企業経営強化税制の拡充

2025/06/10

「経営トピックスQ&A 2025年6月号」掲載


Q.2025年から中小企業庁等が中心となって、売上高100億円という高い目標に挑戦する企業や経営者を応援する「100億宣言」というプロジェクトがスタートしたと聞きました。中小企業がその宣言をすることでどのようなメリットがあるのでしょうか。概要を教えてください。


A.■「100億宣言」とは何か

 「100億宣言」とは、中小企業が売上高100億円という目標を目指し、実現に向けた取り組みを専用ポータルサイトに掲載することで宣言する取り組みです。中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が推進しており、地域の経済等を支える中小企業の加速的な成長に向けた機運の醸成を図ることを目的としたプロジェクトです。

■売上高100億円を目指すこととした背景

 中小企業庁等が売上高100億円という企業規模の拡大を目指すべきとした背景としては、中小企業が中堅企業に成長する時、高いレベルで外需の獲得、域内経済の牽引、賃上げに貢献できるようになっており、日本の経済成長を実現する上で、こうした成長企業の創出が重要であると捉えているためです。 

 また、中小企業の規模については、以前、元金融アナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が著書の中で、「日本が生産性を上げるためには、企業規模を大きくする必要がある」と説いていましたが、世界と日本との生産性の違いという観点からも、規模拡大の必要性が高まっていることが背景として考えられます。

 2023年の中小企業庁の資料によると、売上高100億円以上の企業は約1.4万社(企業数全体の0.4%)であり、今後政策的に支援することでその数を増やしていきたい、という方向性を打ち出しています。


■「100億宣言」の対象法人と想定されるメリット

 「100億宣言」は、中小企業基本法上の中小企業者、又は、法人税法上の中小法人で、売上高10億円以上、100億円未満の法人等が対象です。また登録申請をすることで想定される主なメリットは、以下の通りです。

1. 中小企業経営強化税制(B類型(収益力強化設備)の拡充措置)の適用

2. 中小企業成長加速化補助金の申請が可能(2025年5月公募開始予定)

3.宣言登録企業を対象とした経営者ネットワークへの参加が可能(詳細未定)


■中小企業経営強化税制の拡充

 上記メリットの1つである中小企業経営強化税制に係るB類型は、一定の要件に当てはまる設備投資を行った場合に、税制優遇が受けられる制度となっています。2025年度税制改正において本制度が拡充されており、既存措置の対象設備である一定金額以上の機械装置、工具、器具備品、ソフトウェアに加えて、一定金額以上の建物及びその附属設備が対象となりました。

 その適用にあたっては投資利益率要件が7%以上であることに加えて、経営規模拡大要件として「100億宣言」の登録等が必須条件となっています。


■おわりに

 中小企業を取り巻く経営環境の大きな変化は、中小企業が既存事業の延長線上にない、比較的リスクの高い事業活動(挑戦)に取り組む契機にもなり得ます。また、中小企業政策の重点も「守りから攻め」、「維持から変革」、「静から動」へと変化している中で、貴社の今後の持続的な成長発展のためにも「100億宣言」の登録申請を是非検討していただきたいと思います。

 登録申請にあたっての流れや内容の詳細は、中小企業庁のホームページで最新情報をご確認ください。

執筆者

小林 藤子Fujiko Kobayashi

マネージャー・中小企業診断士

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