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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

会計検査院、合併等があった場合の消費税簡易課税制度について見直しを示唆

2026/02/16

■消費税納税額が22億9214万円過少

2025年11月5日に、会計検査院が「令和6年度決算検査報告」を内閣に提出しました。そのなかで、合併又は分割があった場合の消費税の簡易課税制度の適用について報告されました。具体的には、吸収合併、新設合併又は吸収分割をした場合の消費税の簡易課税制度の適用について、ある種の抜け穴があり、それにより、令和2~5年度で延べ105法人において、納付消費税額が推計で22億9214万円少なくなっているというものでした。

 

■消費税の本則課税と簡易課税制度

消費税には、原則的な課税として、課税売上げに係る消費税額から実際の課税仕入れに係る消費税額を控除して算出する本則課税があります。特例として、中小事業者の事務負担に配慮して、みなし仕入率を用いて課税仕入れに係る消費税額を算出する簡易課税制度があります。

本則課税と簡易課税の計算方法の違いから、納税額に差額(消費税差額)が生じ得ます。例えば、本則課税における実際の課税仕入れに係る消費税額(仮に120)よりも、みなし仕入率により算出される課税仕入れに係る消費税額(仮に160)の方が大きければ、課税売上げに係る消費税額(仮に200)から控除できる課税仕入れに係る消費税額が大きくなり、納税額は少なくなります(本則課税の納税額80=200-120、簡易課税の納税額40=200-160)。

事業者は、原則として、基準期間(課税期間の事業年度の前々事業年度等)における課税売上高が5000万円以下である課税期間について、簡易課税制度を適用することができます。

 

■新設分割があった場合の簡易課税制度の適用

新設分割は、法人(分割法人)が、当該法人の事業に関して有する権利義務の全部又は一部を設立する法人(新設分割承継法人)に対して承継する分割です。新設分割承継法人の簡易課税の判定では、新設分割承継法人の基準期間における課税売上高以外に、分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高を考慮して判定します。そのため、一定の場合、新設分割承継法人の基準期間における課税売上高が5000万円以下であっても、分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高と合計して5000万円超であれば、新設分割承継法人は簡易課税を適用することができません。

 

■吸収合併、新設合併又は吸収分割があった場合の簡易課税制度の適用

吸収合併は、法人が他の法人とする合併で、合併により消滅する法人(被合併法人)の事業の全部を合併後存続する法人(吸収合併法人)に承継する合併です。吸収合併法人における簡易課税制度の適用の可否の判定に当たり、原則どおり吸収合併法人の基準期間における課税売上高のみにより判定します。被合併法人の基準期間に対応する期間における課税売上高は考慮されません。これが抜け穴となり、例えば、簡易課税制度を適用できる規模の小さな法人が、吸収合併等により、簡易課税制度を適用できない規模の大きな法人から事業を承継して課税売上げが多額となったとしても、簡易課税制度を適用することができてしまいます。これは、新設合併や吸収分割の場合でも同様です。

 

■趣旨の逸脱か

会計検査院の調査対象の吸収合併・分割法人のうち、被合併法人等の基準期間に対応する期間における課税売上高が5000万円超であったにもかかわらず簡易課税を適用していたケースにおける推計消費税差額は、前述のとおり22億9214万円に上ると試算されています。特に問題視されたのが、制度の趣旨を逸脱したような事例です。法人設立の日の翌日から半年以内に吸収分割により事業を承継していたことが把握できた吸収分割承継法人は 29 法人(61 法人の 47.5%)となっており、中には、設立の日の翌日から 41 日で吸収分割により事業を承継している法人がありました。これらの法人は、分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高等が 5000 万円を超えているものの、事業を承継する法人を新規設立した後に吸収分割を行っており、新設分割に該当しないことから、現行制度においては、分割承継法人の基準期間の課税売上高が5000万円以下であれば、簡易課税制度を適用することが可能となっています。

 

■「適切なものとなるよう」見直しを示唆

報告書の最後には、「財務省において、多額の課税売上げを有する法人における消費税の簡易課税制度の適用について、簡易課税制度が中小事業者の事務負担に配慮して設けられている趣旨等も含めて、様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要である。」と所見が示されており、本制度が見直されることが予想されます。今後、小規模法人が大規模法人の事業を承継するような吸収合併・新設合併・吸収分割を検討する場合は、簡易課税制度に関する税制改正の動向も注視しておく必要があるでしょう。

執筆者

岡宮 春輝Haruki Okamiya

マネージャー・公認会計士

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