「経営トピックスQ&A 2025年12月号」掲載
Q.中小企業でもPMIが重要とのことですが、PMIの対応は何をいつから行えばいいか、教えてください。
A.■中小企業におけるPMIの状況
PMI(Post Merger Integration)は、M&Aの実施後にM&Aを成功に導くために、主に「経営統合」、「信頼関係構築」、「業務統合」の三つの領域に対する取り組みのことを言います。M&Aが成功したと言えるためには、M&Aをすることが目的ではなく、M&Aによって実施者が想定していた目的の実現や統合効果が発揮されることが必要です。
中小企業によるM&Aについて、中小企業庁が公表している「中小PMIガイドライン」によると、M&A実施後の総合的な満足度で24%が「期待を下回っている」との回答がありました。
また、同ガイドラインでPMIの検討開始時期についての調査結果※1では、「期待を上回る成果が得られている」と回答した企業(①)と、「かなり期待を下回る成果しか得られていない」と回答した企業(②)では、以下のような差がありました。
PMIの検討を早期に開始している企業ほど期待を上回る成果が得られる傾向が見て取れます。
PMIを行うためには以下のポイントがあります。
■M&Aの目的の明確化と成功の定義
M&Aを成功させるためには、M&Aの目的を明確化することが有用です。同時に、何が実現できればM&Aが成功したと言えるのかを明確化することも有用です。M&Aで目指すことと、成功点が明確になっていれば、譲受側・譲渡側双方にとって統一した方向にベクトルを合わせることが可能になり、かつ、定期的な振り返りにより軌道修正などの対応が可能となります。
■PMIを意識した事前準備
M&A成立後すぐにPMIを実行できるよう、M&Aの成立前からPMIでの取り組むべき事項を把握するため、買収監査(DD:Due Diligence)等を通じて得られる譲渡側に関する情報を入手しておくことが必要です。
また、DD等は主に書面での情報収集が中心となるため、DD等で把握できている事項とできていない事項を区分し、PMIにおいて何をするかを予め計画しておくことも重要となります。
■PMIの推進体制の構築と実行
中小企業では譲受側・譲渡側ともに人員に余裕がない状況で、かつ、通常業務に加えてPMIの取り組みをする必要があります。そのため、PMIを推進するための役割を整理し、譲受側・譲渡側双方で役割分担しながら適切な人材を人選することが必要です。
また、M&A直後は譲渡側の経営陣の変更などで経営や事業が不安定になるため、譲受側は譲渡側の事業について詳細な現状把握を進め、新たな課題への対応を含めてPDCAサイクルを回していく必要があります。なお、人材に制限があるため、すべての課題に対応するのではなく、実行可能性と影響度、緊急性から、課題に対する優先順位を設けて対応することが必要です。
PMIの実施はM&A成立後100日、長くても1年を目途に対応することが有用です。
■ポストPMI
PMIが終われば統合が終わりではありません。PMIの取り組み結果を踏まえて次の目標の達成や、PMIでは実施できなかった課題への対応など、取り組みを継続していくことが重要です。
なお、人材不足など自社だけでは対応が難しい分野については、中小企業診断士、経営コンサルタント、税理士、公認会計士などの支援機関の活用をご検討ください。
※1:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「M&Aの実態調査」(2020年9月)