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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

「事業承継・M&A補助金」の活用法とポイントを徹底解説

2025/12/10

中小企業の経営者様にとって、事業承継やM&Aは大きな

経営課題です。そのコスト負担を軽減するために非常に有効なのが、

中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」です。

本記事では、公式サイト(https://shoukei-mahojokin.go.jp/r6h/)の

最新情報をもとに、本補助金の全体像、各枠の要件・補助額、そして

申請時の注意点をわかりやすく解説します。

直近の公募(13次公募:2025年11月終了)は締め切られましたが、

事業承継支援は国策として重要視されており、令和7年度

補正予算案にも予算が盛り込まれています。2026年度(令和8年度)

以降も同様の支援が継続されることが想定されますので、

来期の申請準備として、ぜひ今のうちに制度を理解しておきましょう。


 事業承継・M&A補助金とは?

この補助金は、事業承継やM&A(事業再編・統合)をきっかけとした、「新しい取り組み(設備投資など)」「M&A時の専門家活用」「廃業費用」などの経費の一部を国が補助してくれる制度です。

以前は「事業承継・引継ぎ補助金」という名称でしたが、M&A支援の色がより濃くなり、名称もアップデートされています。以下の4つの「枠」が存在します。

  1. 事業承継促進枠(後継者の新たな挑戦を支援)
  2. 専門家活用枠(M&A仲介手数料やFA費用等を支援)
  3. PMI推進枠(M&A後の統合プロセスを支援)
  4. 廃業・再チャレンジ枠(承継に伴う、もしくは再チャレンジのための廃業費用を支援)

それでは、各枠の詳細を見ていきましょう。

 

1. 事業承継促進枠

親族内承継や従業員承継を行い、後継者が中心となって設備投資や販路開拓など「新しい取り組み」を行う場合に使える枠です。

対象者

  • 事業承継を契機として、経営革新(新しい商品開発やサービスの提供など)に取り組む中小企業・小規模事業者。

この類型の注意点

  • 単に「事業を引き継いだだけ」では対象になりません。「引き継いだ後に、新しい設備を入れる」「店舗を改装する」といった前向きな投資が必要です。
  • 公募申請日から5年後の日までの間に行う予定の事業承継が対象です。

 

2. 専門家活用枠(M&Aの支援)

M&A(第三者承継)を行う際に、仲介業者やフィナンシャルアドバイザー(FA)などの専門家に支払う手数料を補助する枠です。M&Aを検討中の方に最も利用されている枠です。

「買い手」と「売り手」それぞれに支援類型があります。

この類型の注意点(重要)

  • 「成約しなかった場合」の減額: 交付決定を受けても、最終的にM&Aが成約(クロージング)しなかった場合、補助上限額は300万円まで減額されます。
  • 対象経費の限定: 補助対象となるのは、原則としてM&A支援機関登録制度に登録された専門家への経費のみです(例外:DD業務のみを依頼する場合)。
  • DD実施時の上乗せ: 財務・法務などのデューデリジェンス(買収監査)を実施する場合、上限が200万円上乗せされます。

 

3. PMI推進枠(M&A後の統合支援)

M&A成立後の「統合プロセス(PMI)」にかかる費用を支援する、比較的新しい枠です。M&Aは「成約して終わり」ではなく「統合してからが本番」であるという課題に対応しています。

① 専門家活用類型

PMIにかかる専門家活用費用を補助します。

  • 補助上限額: 150万円
  • 補助率: 1/2

② 事業統合投資類型

統合に伴う設備投資やシステム統合費用などを補助します。

  • 補助上限額: 800万円(賃上げ実施で1,000万円
  • 補助率: 1/2(小規模事業者は 2/3

 

4. 廃業・再チャレンジ枠

M&Aや事業承継に伴って、不採算事業を廃業したり、店舗を閉鎖したりする場合や、M&Aで事業を譲り渡せなかった事業者が廃業・再チャレンジしたりする場合の費用(原状回復費、在庫処分費など)を補助します。

  • 補助上限額: 150万円
  • 補助率: 併用する他の枠(専門家活用枠など)の補助率に準じる(1/2 または 2/3)

【ポイント】

他の枠と併せて申請することが可能です。

 

各類型に共通する注意点

申請を検討する前に、以下のポイントを必ず確認してください。

  1. 「gBizIDプライム」の取得が必須

申請は電子申請システム(jGrants)のみで行われます。ID取得には2〜3週間かかることがあるため、公募開始を待たず、早めに取得しておきましょう。

  1. 相見積もりの取得

原則として、発注先を決める際には「相見積もり」が必要です。事務局の手引きをよく確認しましょう。

  1. 「交付決定」前の契約・発注は対象外

「補助金の交付決定通知」が届いてから契約・発注・支払を行った経費が対象です。交付決定前に契約・発注・支払を行った費用は対象となりません。

  1. 事業実施期間の厳守

決められた期間内に事業(M&Aの成約・契約履行や設備等の導入・支払)を完了させる必要があります。M&Aは相手があることなのでスケジュールが延びがちですのでご注意ください。

 

2026年度(令和8年度)も公募は実施される?

直近の公募要領(令和6年度補正予算)に基づく13次公募は終了しましたが、これから準備を始める経営者様もご安心ください。

日本の中小企業の高齢化・後継者不足は待ったなしの状況であり、政府は「事業承継・M&A」を最重要政策の一つと位置づけています。令和7年度補正予算案にも予算が盛り込まれており、2026年度も同様の公募が実施されることが予想されています。

 

今やるべき準備

次の公募開始に向けて、今のうちから以下の準備を進めておくことをおすすめします。

  • gBizIDプライムアカウントの取得
  • 認定支援機関(商工会議所、金融機関、税理士など)への相談
  • M&A仲介業者やFAの選定(専門家活用枠を使う場合)
  • 「事業承継計画」の策定準備
  • 各種加点事由に該当する書類の準備

本補助金は最大で数百万円〜1,000万円規模の支援が受けられる非常に大きなメリットがある補助金です。専門家とも相談しながら、次回の公募チャンスを逃さないように準備を進めましょう。

 

※本記事は2025年12月時点の公式サイト情報(令和6年度補正予算・13次公募要領)に基づいて作成しています。次回の公募では要件や補助率が変更される可能性がありますので、最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。

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