今回のテーマは、事業拡大を予定している事業者の方には特にご注意いただきたい「事業所税」についてです。
事業所税は、申告納税方式の税で、一定規模以上の都市・事業規模にのみ課されるしくみとなっていることもあり、納税義務の発生自体を認識できていないケースがあります。
今回は、事業所税の概要と注意点について解説いたします。
1.事業所税とは
(1)制度の趣旨
事業所税は、都市環境の整備費用に充てることを目的とした税金です。
すべての地域で課税されるわけではなく、東京都23区や政令指定都市、人口30万人以上の都市などが対象となります(例:長野県の場合は、長野市のみ)。
(2)課税の仕組み
事業所税には、以下の2つがあります。
① 資産割:事業所の床面積に対して課税(1㎡あたり600円)
② 従業者割:従業者の給与総額に対して課税(給与総額の0.25%)
この2つを合算して税額を計算します。
(3)免税点
事業所税には、中小規模の事業者の負担を考慮し、免税点(課税されない基準)が設けられています。原則として、課税期間の末日において以下の範囲内であれば、税金は発生しません。
① 資産割:同一市(または23区)内の事業所床面積の合計が1,000㎡以下
② 従業者割:同一市(または23区)内の従業者数の合計が100人以下
免税点判定は、資産割と従業者割のそれぞれで行い、どちらか一方でも超えると、その超えた方について税金が発生します。
免税点があることで、多くの中小企業においては納税義務が生じないことになっています。
(4)徴収の方法
事業所税は、事業者が自ら計算して申告・納税する「申告納税方式」が採用されています。
固定資産税のように自治体から送られてくる納税通知書をもとに納税を行う「賦課課税方式」とは異なるため、自社で申告・納税の要否を判定しなければなりません。
(5)申告納付期限
法人の場合は事業年度終了の日から2か月以内、個人の場合は事業を行った翌年3月15日までに申告して納付します。
法人税や法人事業税などにある申告期限の延長制度はありませんのでご注意ください。
2.「使用者(借主・テナント)」こそが納税義務者
事業所税と固定資産税との大きな違いは、「誰が払うか」です。
・事業所税:その場所で事業を行っている「使用者(借主・テナント)」
・固定資産税:土地・建物の「所有者(オーナー)」
テナントビルの一部を借りて事業を行う場合、事業所税の納税義務者は借主となります。借主である事業者が「借りているだけだから、税金関係はオーナーが払うもの」と事業所税について誤解してしまうと、意図せず無申告となる恐れがあります。
3.無申告のリスク
事業拡大で新たにオフィスを借りたり、従業員を増やしたりした際、気づかないうちに免税点を超えていることがあります。
無申告が発覚すれば、過去に遡って課税され、さらに延滞金や加算金が課されます。長期間放置されていた場合、その総額は経営に大きな影響を与える金額になる可能性があります。
4.事業所税に関するよくあるご質問
Q. 免税点以下であれば申告は不要ですか?
A. 免税点以下であっても、申告が必要となる場合があります。例として、東京都23区では、以下のいずれかの場合に該当すれば申告が必要です。
① 前事業年度(個人の場合は前年)に納税義務があった場合
② 23区内の事業所等の床面積の合計が800㎡を超える場合
③ 23区内の事業所等の従業者数の合計が80人を超える場合
Q. 事業所税の負担を抑えることはできないでしょうか?
A. 非課税・課税標準の特例・減免などの軽減制度があります。例えば、休憩室や更衣室といった勤務者の福利厚生施設については非課税とされています。ただし、制服着用者の更衣室や工場の浴室など、業務の性質上不可欠な施設は、福利厚生施設には該当しないとされる場合があるため、軽減制度の適用には慎重な判断が必要です。
Q. みなし共同事業とはどのようなものでしょうか?
A. 親族やグループ会社などの「特殊関係者」と同じ建物内で事業を行っている場合、それらを合算して判定する制度です。単独では免税点以下であっても、グループ全体で判定すると納税義務が発生するケースがあります。
5.おわりに
事業所税は、前年の申告状況をそのまま踏襲してしまい、誤りが長年放置されてしまうケースが見受けられます。
予期せぬキャッシュアウトを防ぐためにも、適正な申告が重要です。
自社の状況に不安がある、あるいは判定が難しいと感じる場合は、お早めにご相談ください。