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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

免税店(輸出物品販売場)制度と令和7年度税制改正点

2025/10/14

 近年、訪日外国人旅行者数は回復傾向にあり、それに伴う消費額も増加しています。このインバウンド需要を取り込むために、「免税店」の導入を検討されている事業者様も多いのではないでしょうか。

 今回は、外国人旅行者等に商品を販売する際の消費税免税店制度の概要と、令和8年11月1日から施行される制度改正のポイントについて解説します。


消費税免税店制度の概要

 消費税の免税店制度とは輸出物品販売場(免税店)を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者に対して、免税対象物品を一定の方法で販売する場合に、消費税が免除される制度です。

 免税店には、百貨店や家電量販店等の「一般型」、商業施設内のテナントなど手続きを第三者に委託する「手続委託型」、特定の自動販売機で行う「自動販売機型」といった種類があります。

 免税販売の対象となるには、商品は家電製品等の「一般物品」と化粧品等の「消耗品」の区分に応じて1日の販売合計額が税抜5,000円以上等の要件を満たす必要があります。また、購入者は短期滞在の在留資格を持つ外国人旅行者等、一定の要件を満たす「非居住者」である必要があります。


■免税店になるための手続き

 免税販売を始めるには、納税地の所轄税務署長に「輸出物品販売場許可申請書」を提出し、許可を受ける必要があります。

 許可を受けるためには、国税の滞納がないことや、免税手続きに必要な人員・設備があること等、いくつかの要件を満たす必要があります。


令和8年11月1日からの主な改正点

 現行制度では、国内での不正転売などが問題となっていました。これを防止するため、令和8年11月1日から、以下のように制度が大きく変わります。

Ⅰ 免税方式が「リファンド方式」へ変更

・(現行):販売時に税抜価格で販売。

・(改正後):一度税込価格で販売し、購入者が日本を出国する際に税関で手続きを行った後、事業者から消費税相当額が返金される方式(リファンド方式)に変わります。

Ⅱ 免税店の区分や手続きの見直し

・ 店舗の区分は「一般型」と「自動販売機型」の2種類に集約されます。「手続委託型」は「一般型」に統合されますが、手続きを第三者に委託すること自体は引き続き可能です。

・ 各種申請手続きの書類が簡素化されます。

Ⅲ 免税対象物品の範囲の変更

・区分の廃止・包装の廃止

「一般物品」「消耗品」の区分が撤廃され、包装要件も廃止されます。

・用途要件の廃止

免税対象物品の範囲について、「通常生活の用に供する物品」から「用途を問わない」に変更されます。

・ 購入上限額の廃止

金額要件も区分撤廃に伴い合計税抜5,000円以上となります。


まとめ

 免税店の導入は、増加するインバウンド需要を取り込む大きなチャンスです。一方で、令和8年秋には大きな制度改正が控えており、これから免税販売を始める事業者様も、既に始めている事業者様も、改正内容を正しく理解し、準備を進めることが重要です。

 ご自身での対応に不安がある、具体的な手続きについて相談したいといった場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者

清水 美都Misato Shimizu

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