「経営トピックスQ&A 2025年10月号」掲載
Q.労働者の数が50人以上となった場合、安全衛生管理に関して会社が実施しなければならならないことがあると聞きました。具体的に何をすれば良いでしょうか。
A.■常時使用する労働者とは
労働安全衛生法により「常時使用する労働者」が50人以上の事業場にのみ義務付けられる措置があります。ここでいう「常時使用する労働者」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数をいい、「企業単位」ではなく「事業場単位」でその数を判断します。
■安全衛生管理体制
常時使用する労働者が50人以上の事業場には、次の①~⑥の実施が義務付けられています。
① 産業医の選任
全ての業種において、産業医を1人以上選任しなければなりません。選任要件に達した日(常時使用する労働者が50人以上となった日)から14日以内に選任し、遅滞なく所轄労働基準監督署へ選任の届出をすることが義務付けられています(後述の②~③も同様)。
②安全管理者の選任
下記の業種において、専属の安全管理者を1人以上選任しなければなりません。安全管理者は、安全に関する技術的事項を管理するとともに、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するために必要な措置を講じる義務があります。
<業種>
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
③衛生管理者の選任
全ての業種において、専属の衛生管理者を1人以上選任しなければなりません。衛生管理者は、衛生に関する技術的事項を管理するとともに、少なくとも週1回、作業場等を巡視し、設備、作業方法、衛生状態等を確認し、必要な措置を講じる義務があります。
④衛生委員会の設置・運営
労働者の健康障害の防止や健康の保持増進に関する取り組み等の重要事項について、労使が一体となって調査審議を行う場として衛生委員会の設置が義務付けられています(業種と常時使用する労働者の人数によっては、「安全委員会」の設置も必要です)。
衛生委員会の構成員は、委員長(議長)以外、人数の定めはありませんが、使用者側・労働者側で同数とし、委員長(議長)を除く構成員の半数は、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければなりません。
衛生委員会の開催頻度は毎月1回以上とし、開催後は、遅滞なく議事の概要を労働者に周知することに加え、議事の記録を3年間保存する義務があります。
⑤心理的な負担の程度を把握するための検査の実施
毎年1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施し、一定の要件に該当する労働者から申出があれば、医師による面接指導を実施しなければなりません。検査の結果及び面接指導の結果は、5年間保存する義務があります。
⑥報告義務
次の報告書を所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。
ア.定期健康診断結果報告書
イ.心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書
■おわりに
以上の措置義務を怠った場合、それぞれに罰則が規定されていますので、漏れのない対応が求められます。