「経営トピックスQ&A 2026年1月号」掲載
Q.金融機関の自己査定とはどのような制度で、企業経営にどんな影響を及ぼすものなのか教えてください。
A.■金融検査マニュアルの廃止
金融機関の「自己査定」とは、保有する融資先の経営状況や返済能力を内部的に評価し、債権の健全性を区分する制度です。その目的は、貸倒れリスクを早期に把握し、必要な引当金を積むことで、金融機関自身の経営健全性を維持することにあります。
かつては金融庁の「金融検査マニュアル」に基づき統一的に自己査定が行われていましたが、2019年12月の廃止以降は、各金融機関が自主的に運用しています。それでも、財務による評価は依然として中核であり、債務償還年数、営業利益・自己資本比率、キャッシュフロー、延滞・条件変更状況などの指標を用いて取引先を評価します。また、これらの財務分析に基づき、取引先は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」などに分類され、内部格付けや引当金設定に反映されます。
近年は、単なる財務分析に加え、事業性評価という視点が重要性を増しています。事業性評価は、数字だけでは見えない企業の将来性や持続的競争力を判断する手法で、金融機関が経営者との対話を通じて評価することが多くなっています。
■事業性評価とは「数字の裏にあるストーリー」を見ること
事業性評価とは、財務数字だけでなく、企業の将来の返済能力や持続的競争力を総合的に判断する取り組みです。金融機関が特に注目する要素は三つあります。
① 経営者による自社理解の深度
経営者が強みと課題を正確に把握し、改善策を具体的に説明できるかが評価されます。赤字でも、原因分析と改善方針を論理的に提示できる企業は高く評価されます。数字だけではなく、経営者自身が現状と将来を理解しているかを測る指標となります。
② 将来戦略の明確性と実現可能性
中長期的な事業展開が具体的で、実行可能性があるかどうかが重要です。販路開拓や生産性向上、商品・サービスの強化など、現実的な施策が提示されることで、金融機関は事業の持続性を評価できます。抽象的な理念や目標だけでは評価が低くなりやすいです。
③ 将来計画の数値的裏付け
売上、利益、返済計画などを数字で整理し、論理的に説明できることが求められます。金融機関は数字そのものより、整合性と実現性のある計画を重視します。計画が合理的で、経営者自身が説明できる場合、自己査定の評価は大きく向上します。
つまり、事業性評価とは、過去の業績ではなく、「未来の数字を自ら説明する力」を評価するものです。金融機関は「今後どのように改善し、返済を継続するか」という経営の筋道に着目しています。経営者が将来像を論理的に語れるかどうかが、自己査定の評価の分かれ目となります。
■経営者に求められる具体的対応
事業性評価を高めるには、経営者が自社の将来像を数字と論理で語れることが重要です。月次試算表を整備し金融機関に共有する、中長期的な経営方針を簡潔に文書化する、売上増やコスト削減などの改善成果を定量的に報告する、といった取り組みが信頼向上につながります。