「経営トピックスQ&A 2026年2月号」掲載
Q.2025年にハラスメント対策の法改正があったと聞きました。当社ではどのような対応が必要となるでしょうか。
A.■深刻化するハラスメント問題と法規制の強化
近年、職場におけるハラスメント防止対策は企業経営の重要な課題となっています。2025年6月に労働施策総合推進法及び男女雇用機会均等法の改正法が成立し、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」といいます)と就活セクシュアルハラスメント(以下、「就活セクハラ」といいます)防止対策が企業の義務となりました。施行は26年10月を予定しており、業種・企業規模に関わらず全ての事業者が対象となりますので、これらの法改正に適切に対応することが求められますので注意が必要です。
■企業に義務付けられているハラスメント防止措置
現在、企業に課せられているハラスメント防止措置は、職場における「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」の3類型についてです。事業主は、これらのハラスメント防止のために、以下の雇用管理上の措置を必ず講じなければなりません。26年以降は、カスハラと就活セクハラについても同様の防止措置が義務となります。
【措置1:方針の明確化と周知・啓発】
ハラスメント禁止の方針を明確化し、行為者への厳正な対処方針と懲戒内容を就業規則等に規定します。管理監督者を含む全従業員に研修や社内報で周知・啓発することが必要です。
【措置2:相談体制の整備】
相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できる体制を整備します。ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合も広く相談に応じることが重要です。
【措置3:事後の迅速な対応】
事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への配慮措置と行為者への措置を適正に行います。併せて再発防止に向けた措置を講じることが必要です。
【措置4:プライバシー保護と不利益取扱いの禁止】
相談者や行為者等のプライバシー保護措置を講じ、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取扱いを禁止する旨を労働者に周知します。
■カスハラ防止対策
カスハラとは、顧客等からのクレーム・言動のうち、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるものなどを指します。暴言、脅迫、土下座の強要、長時間の拘束、SNSでの誹謗中傷などが該当します。
企業は従業員を守る観点から、カスハラに対する方針を明確化し、対応マニュアルの整備、相談体制の構築、従業員への教育研修の実施が求められます。初期対応では複数名で対応し、一人で抱え込まず現場監督者や相談窓口に速やかに引き継ぐ体制を整えます。専用電話の設置や録音体制の整備、犯罪に該当する言動は警察へ通報するなど、組織として従業員を適切にサポートする体制の構築が必要です。
■就活セクハラ防止対策
就活セクハラとは、人事担当者等による就活生等に対するセクシュアルハラスメントを指します。食事やデートへの執拗な誘い、性的な冗談、不必要な身体への接触、性的な関係の強要などが該当し、拒否したことによる採用差別や内定取消なども含まれます。
企業は、就活セクハラ防止の方針を明確化し、採用担当者への研修実施、求職者が相談できる窓口の設置と周知、学生と接する際のルールをあらかじめ定めることが必要です。インターンシップ、企業説明会、採用面接など、求職者と接触するあらゆる機会における対策を講じ、求職者が安心して選考に臨める環境づくりが求められます。
■持続可能な経営への展望
ハラスメント防止対策は単なる法令遵守にとどまらず、優秀な人材の確保、企業イメージの向上、生産性の改善につながる重要な経営戦略です。特に人手不足が深刻化する中、働きやすい職場環境の整備は企業の競争力を大きく左右します。従業員一人ひとりが尊重され、安心して働ける職場づくりこそが、持続可能な企業経営の基盤となります。