「経営トピックスQ&A 2026年3月号」掲載
Q.新リース会計基準が2027年から適用されると聞きました。中小企業の実務にも影響があるのでしょうか。これまでの処理と変わる点があれば教えてください。
A.■改正の概要と中小企業の位置づけ
今回の改正は、国際的な会計ルールに合わせて、原則として全てのリース契約を貸借対照表に計上することを求めるものです。新基準では、従来はリースとして扱われなかった不動産の賃貸借契約などもその対象となる可能性があり、会社によっては会計処理や財務数値に与える影響が非常に大きくなります。
ただし、中小企業が準拠する「中小会計指針」や「中小会計要領」は変更されていないため、多くの中小企業においては直ちに適用する必要はなく、従来の賃貸借処理を継続することが可能です。一方で、上場企業やその連結子会社、上場準備会社等は新基準の適用対象となり、以下のような影響が生じます。
■会計への影響
新基準の適用は、決算書の表示を大きく変えます。
1.貸借対照表の肥大化
これまで貸借対照表に計上されなかったリース契約が、「資産(使用権資産)」と「負債(リース負債)」として計上されます。総資産・総負債が増加するため、自己資本比率やROA(総資産利益率)が低下し、一見すると財務体質が悪化したように見える可能性があります。
2.損益計算書の項目の変化
「賃借料」の代わりに「減価償却費」と「支払利息」が計上されます。利息相当額が営業外費用となるため、営業利益は増加することになりますが、経常利益以下の段階利益には利息費用が反映されます。
■税務への影響
注意が必要なのが税務です。会計基準が変わっても、法人税や消費税の基本的な取扱いは変わっていないため、会計と税務の間でズレが生じます。
1.法人税(申告調整の発生)
税務上で「売買」として扱われるリースに該当しない限り、各期の会計上の費用(減価償却費+支払利息)と税務上の損金(賃借料)は一致しません。そのため、法人税申告書上で両者の差額を調整する処理(申告調整)が必要になります。
2.消費税(仕入税額控除の時期の管理)
会計上で資産計上しても、税務上の要件を満たさない限り、消費税法上は「賃貸借」として扱われます。この場合、仕入税額控除は賃借料の支払い時に行う必要があります。消費税の取扱いに対応した会計処理を行わないと、控除の時期や金額を誤るリスクがあります。
■事務負担への影響
新基準の適用は、経理事務において大きな負担となります。
1.契約の網羅的な洗い出し
機器等のリースに加え、本社や工場、社宅、車両など、賃借しているあらゆる資産をリストアップする必要があります。さらに、リースの識別やリース期間の決定等で判断に悩む場面が増えると考えられます。
2.データ管理の手間
決算書用には「会計基準」、税務申告用には「税法基準」の2つの数値が必要となり、固定資産台帳や仕訳データの管理が非常に煩雑になります。
■おわりに
このように、新リース会計基準は単なる勘定科目の変更に留まらず、税務申告の複雑化や事務量の増加を招きます。中小企業には強制適用されませんので、実務上の負担を避けるために従来の処理を継続することで差し支えありません。ただし、親会社の方針等で対応が必要な場合は、早期に専門家と連携して準備を進めることをお勧めします。