「税務トピックスQ&A 2026年6月号」掲載
Q.当社は、外国人労働者を多く採用しています。わが国を見渡しても外国人労働者の受入れが進むなかで、税務面で留意すべき点は何ですか。
A.増加する外国人労働者
わが国の深刻な人手不足を背景に、外国人労働者の活用はもはや選択肢ではなく、企業の存続を左右する事業戦略の一つとなりました。令和7年10月末時点の外国人労働者数は約257万人に達し、届出義務化以降で過去最多を更新しています。しかし、その一方で、2026年4月に外食業の「特定技能」受入れが上限到達により停止されるなど、規制と人手不足が進む実態の乖離が顕在化しています。
こうした中、経営者には人材の「量」の確保だけでなく、配置の「質」の管理が求められます。例えば、専門職(技人国)の資格者に現場の単純作業をさせることは、不法就労助長罪に問われ、社会的信用を損なうリスクがあります。また、税務面でも、居住者の判定や源泉徴収の取扱いを誤れば、後の税務調査で指摘を受けることになります。経営者としては、人事の範疇のみならず、税務リスクを正しく理解しておくことが重要です。
居住者の判定
まず押さえておきたいのが、税務上の「居住者」判定です。外国人であっても、日本に生活の拠点があり、一定期間以上滞在していれば、日本の「居住者」として扱われます。また、日本国籍を持たない居住者のうち、来日してからの期間が比較的短い場合には「非永住者」となり、課税される所得の範囲が限定されます。この判定を誤ると、本来不要な源泉徴収をしてしまったり、逆に課税漏れを招いたりするおそれがあります。
在留資格と税務
次に重要なのが、在留資格と税務の関係です。税務上、在留資格そのものが課税・非課税を直接決めるわけではありません。しかし、実務では、在留資格によって就労内容が異なるため、結果として税務上の取扱いに大きな影響を与えます。たとえば、「技能実習」の在留資格で働く外国人については、租税条約により、日本での課税が免除される場合があります。ただし、その前提として、在留資格で認められた範囲内の業務を行っていること、そして所定の労働時間内で働いてもらうことが必要です。実態が伴っていない場合や所定労働時間を超えた場合には、免税が否定され、企業側が源泉徴収漏れを指摘される可能性もあります。
また、「研修」の在留資格で来日する外国人に支給する研修手当については、労働の対価ではなく、生活費などの実費補填と位置づけられる限り、原則として課税されません。しかし、業務内容や支給額によっては給与と判断されることもあり、形式だけで判断するのは危険です。一方、近年急増している「特定技能」の外国人については、日本人従業員と同様に、給与課税と源泉徴収が必要となります。
さらに見落とされがちなのが、国外に住む扶養親族の取扱いです。外国人労働者が母国に家族を残している場合、一定の要件を満たせば扶養控除を受けることができますが、そのためには親族関係を示す書類や送金の事実を確認する必要があります。企業が年末調整でこれらの確認を怠ると、後の税務調査で扶養控除の是正を求められるリスクがあります。
在留資格と税務リスクの管理
外国人労働者の受入れは、経営にとって大きな力となる一方で、税務リスク管理の複雑化を伴います。経営者としては、人事や現場任せにするのではなく、在留資格や税務の基本を理解したうえで、専門家と連携しながら体制を整えることが必要といえるでしょう。