誰しもがいつも期待通りの結果が残せるわけではなく、やむをえず不本意な結果に終わることがあります。ビジネスではそうしたとき、不本意な結果をどのように反省し、次に活かすかが重要です。先般の日銀の「総括的検証」はその面から言うと不十分であったと言わざるを得ません。
日銀と一般会社では目的や結果責任の取り方などに大きな違いがありますが、成績が残せなかったときの総括の仕方として、普通の会社でも参考になる点があるように思います。
日銀の言い訳
日銀は9月21日に「金融緩和の総括的検証」を発表しました。黒田総裁は就任早々、「2年で2%のインフレ目標を達成する」ことを大々的にぶち上げて量的緩和を中核とした金融政策を実施してきましたが、3年半経った現在も目標を達成できていません。そこで、これまでの金融政策を総括し、今後の金融政策を再構築する必要に迫られ、今回の発表となりました。
ところが、日銀の今回の総括的検証に基づいて提示された金融政策は、余り評判がいいとはいえません。というのは、専門家には理解できるかもしれませんが、一般人の目からは、政策変更が金融緩和の継続なのか縮小なのかわかりにくいからです。無論、その大前提に金融政策の有効性の問題があり、私個人としてはいわゆるリフレ派が主張する量的金融緩和が実体経済に及ぼす影響については懐疑的ではあるのですが、ここでそうした小難しい金融政策の有効性を論じようというのではありません。私がここで取り上げたいのは日銀の期待外れの結果に対する「言い訳の仕方」です。
すべてが外部要因?
日銀は2%のインフレ目標に届かなかった要因として、以下の理由を挙げました。一つは原油価格の想定以上の下落、二番目は消費税引き上げ後の需要の弱さ、最後に新興国経済の減速と国際金融市場の不安定性です。1番目と3番目は海外のことですから、日銀の力の及ぶ範囲ではありませんし、2番目は国内ではありますが税制であり、これも日銀の守備範囲ではありません。要するに、自分が採用した政策自体に誤りはないが、うまくいかなかったのはすべて自分には手に負えない外部のせいだ、といっているわけです。こうした弁解の仕方には次のような批判が予想されます。
外部要因だけが問題で、自分の政策は悪くないとしたら、政策の方針転換は必要ではなく、旧来政策をさらに強力に推進すればいいという結論もあり得ます。あるいは、そもそも日銀の金融政策は外部環境の変化も考慮に入れた上のものだったのではないか。外部環境は当初から不変だという前提で政策を考えていた、とでもいうのでしょうか。さらに、想定以上の外部環境の変化に対応した政策の転換が必要であるとしたら、金融の専門家として、外部環境の変化を想定できなかった自らの不明を恥じた上で政策転換を行うべきでしょう。
今回、これまでの量的拡大一辺倒から、金利も視野に入れた金融政策に変更したのですが、思わしくない結果をもたらした要因は外部にあるが、これまで掲げてきた自らの政策は変更するというのは、どうにも説得力を欠いています。自らの責任を曖昧にしたままの政策転換ですから、一般人には分かりにくい方針変更になったのだと思われます。
反面教師
事業会社でも期待された結果が出せず、方針転換を迫られる局面があります。そのときに、不成績の要因を外部要因だけで説明したのではインパクトに欠ける方針変更になってしまいます。結果に対して、自らに責任を引き受ける覚悟が必要です。その覚悟の有無が今後の政策転換の強さにつながるからです。
日銀は政治的影響が大きく、事業会社に比べ自らの責任を認めにくい組織です。それでも今回の総括的検証に基づく政策変更のありようは、事業会社において方針転換を行うときの反面教師の一面を示していると思います。