金利上昇が益々本格化しています。前回「大砲かバターか」において、金利上昇の国家財政に与える効果を取り上げたのですが、今回は民間企業融資に対する影響を考えてみたいと思います。「金利ある世界」が本格的に復活すると、金利が持つ「苛烈な性格」がより強烈に発揮されるようになります。
貸倒れリスクを反映
金利には預貯金金利や国債金利など様々な形態がありますが、本稿では主として銀行の融資金利について考えてみます。
いわば、金利はカネという商品に対する価格です。商品の価格は原則として需要と供給のバランスで決まります。融資についてみれば、カネを貸したいという資金供給に対しカネを借りたいという資金需要が多ければ金利は上昇し、逆に少なければ下落します。この点においては他の商品価格と同一です。
一方、金利はその個別性の強さという点では他の商品価格と大きく異なります。大方の商品は購入者に対して同一の値段で売ることが一般的であるのに対し、銀行の融資は顧客ごとに相対で金利を決めることが多くなります。無論、住宅ローンや自動車ローンのような金利セット型商品もあるのですが、そうした商品においても最優遇金利を設定し、それを下限として、顧客の信用力に応じて金利を上乗せしていくというのが普通です。そして、企業向けの事業融資は完全に顧客ごとに金利を相対で決めることになります。
このように異なるのは、一般の商品は商品を売却して代金を徴収すれば、それで商売は完結するのに対し、銀行融資はカネを貸して終わりではないからです。融資はカネを貸して、そのカネを回収して初めて商売が完結します。融資している期間中にはどんな顧客においても大なり小なり回収できない貸倒れリスクが必ず存在します。銀行はそのリスク負担料を金利に織り込もうとするのですが、期間が長いだけにそのリスク算定が顧客ごとに異ならざるを得ません。その結果、融資する原資(預貯金等)の調達コストは同じであるにもかかわらず、貸倒れリスクの相違により、融資の価格である金利が顧客ごとに異なってくるのです。
金利は弱肉強食
貸倒れリスクは顧客の信用力に応じて異なります。銀行が信用力をどのように判断するかは、それまでの取引実績、経営者の人柄、担保力、あるいは交渉力などに応じて異なり、ややグレーな部分も存在するのですが、何と言ってもその中核は財務力になります。財務力の強い顧客ほど貸倒れリスクは低くなりますから、適用金利が低くなり、逆に財務力の弱い顧客は適用金利が高くなります。
そうすると困ったことが起きます。つまり、金利の支払い能力という見地から見ると、カネを借りるという同じ金融サービスを受けながら、支払い能力の高い企業ほど支払う利息額が少なくなり、支払い能力の低い企業は多くの利息額を払わなければならなくなるからです。いわば、融資金利は「強きを助け、弱きをくじく」弱肉強食の性格を持つのです。その結果、資本主義の負の側面である格差拡大を助長しているといってもいいかもしれません。
税制は応能負担
金利の持つこの特色は税金の支払いと比べてみると、より鮮明になります。税務では、国防や公共事業、福祉等の受益するサービスは同じでも、応能負担(支払い能力に応じた負担)が重視され、所得税では所得が高くなるほど税率が高くなる累進税率が採用され、法人税でも税負担能力が高い大企業は中小企業より税率が高く設定されています。
このように金利支払いと納税を比べたとき、倫理観という点では金利の支払いには問題があるように見えますが、これはそれぞれの役割の違いからやむをえないものだといえます。納税はすべての国民の生活の安定のために所得の再分配機能が要請されるのに対し、金利は資本主義経済の発展に寄与する役割が期待されるからです。
倒産の増加
金利のこうした機能は次のような結果を招来します。本業が不振となり、財務体質が劣弱になるほど、借入が必要になり、高い金利を要求されます。高い金利を支払うほど財務体質は悪化して、更に高金利を要求されます。借入金の元利金支払いのための借入を起こす限り、この悪循環は続き、いずれ破綻に追い込まれます。
こうした結果になるのは、経営者の経営能力や事業内容に欠陥があるせいであり、そうした企業は市場からの退出が迫られるのです。労働力や資本等の経営資源は有限であり、効率の低いところから、より効率性の高い分野にシフトさせなければ経済は成長できません。効率の悪い企業の市場からの退出は当事者にとってはつらいことですが、資本主義にとっては必要であることも事実です。支払い能力に反比例して増加する金利負担は反倫理的であるように見えますが、資本主義経済には不可欠の新陳代謝機能の一翼を担っているということもできるのです。
最近、「倒産件数が13年振りの多さ」だとの報道がありました(26年7月9日付日本経済新聞)。その主因として物価高や人手不足などが挙げられていますが、「金利ある世界」が到来して、低金利時代は眠っていた金利の新陳代謝機能が復活したことも倒産増加の一因になっていると思います。金利が上昇するにつれ、金利が持つこうした苛烈性が牙をむくことも忘れてはなりません。