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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

インフレ下での更新投資の注意点

岡宮 春輝
2026/09/10

「経営トピックスQ&A 2026年9月号」掲載


Q.物価の上昇が続いていますが、設備の更新投資にあたって注意しなければならない点があったら教えてください。


A.■物価上昇の継続

 物価上昇が続いています。日本銀行公表の国内企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は、26年6月時点で135.4となっており、原材料価格や人件費に加え、設備の価格も上昇しています。デフレ時代とは異なり、中小企業にとっては、将来の設備更新をどのように行うかが、これまで以上に重要な課題になりつつあります。

 

■自己金融効果と更新投資

 建物、機械および器具備品などの有形固定資産は、購入した価格を基に貸借対照表に計上し、取得後の物価上昇の影響は考慮しません。これらの資産については、使用または陳腐化により価値が減少していくため、取得原価を耐用年数にわたって費用計上していく減価償却を行います。資産を購入した時に資金の支出が済んでいるため、減価償却費計上時には資金の支出を伴いません。そのため、売上高から減価償却費を含んだ費用を差し引いてもなお利益が残っている場合、利益の金額以上に減価償却費に見合う資金も手元に残ったことになります(運転資本の増減、設備投資、借入金の返済等を無視した場合)。

 このように企業内部に減価償却費に見合う資金が留保されることを「自己金融効果」と呼びます。利益や自己金融効果により回収した資金を、設備更新に再投資することで、事業を継続することができます。

 

■インフレ下の更新投資

 インフレ下においては、利益が出ていても、更新投資ができないこともあり得ます。単純な例で考えてみます。資本金1,000万円で会社を設立し、1,000万円で設備を購入したとします。耐用年数は5年とし、1年間の減価償却費は200万円、5年経過したら設備を更新します。また、1年間の減価償却前の営業利益は220万円、法人税等は税引前利益の30%とします。

 5年経過後の2031年3月期には、1,070万円の資金が残ります。ここで設備を更新する必要があります。デフレ時代には、以前と同程度の性能を持つ設備を、従来と大きく変わらない価格で購入できたかもしれません。しかし、インフレにより、設備が1,300万円や1,400万円に値上がりしていた場合、利益が出ていても資金が足りず、不足分については借入や増資などにより資金調達しなければなりません。不足額自体が大きくなくても、更新投資が複数設備で同時に発生する場合や、運転資金需要が増加している場面では、資金繰りに大きな影響を与えかねません。

 

■更新投資に対する備え

 インフレ下では、さまざまなコストが上昇しているだけでなく、利益が出ていても設備を更新できない可能性があります。販売価格を見直す際などには、原材料価格や人件費の上昇に加えて、将来の更新投資も考慮することが重要です。また、更新投資に必要な金額を早めに試算し、自己資金で足りない場合には、事前に金融機関に相談しておくことも一案です。インフレ局面を乗り切るために、短期的な損益だけではなく、将来の更新投資まで見据えた利益確保と資金計画が、より一層重要になっています。

執筆者

岡宮 春輝Haruki Okamiya

マネージャー・公認会計士

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