2026年8月20日、国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」の資料において、非上場株式の新たな評価方式の方向性が示されました。
もしこの新方式が導入された場合、現行の評価方式を前提とした事業承継計画は抜本的な見直しを迫られる可能性が高まっています。
■ なぜ、自社株の評価額が「3倍から4倍」に跳ね上がるのか
新方式が導入された場合において実務上注意すべき点は、多くの中小企業で「自社株の評価額が現在よりも高くなる」という点です。純資産が大きければ大きいほどその影響は顕著であり、当法人の試算においても、現行評価額の3倍から4倍に跳ね上がるケースが想定されています。
これほどのインパクトが生じる理由は、株価が低く算出されやすい傾向にある「類似業種比準方式」の廃止や、会社規模(大・中・小)による区分が撤廃され、幅広い企業を共通の方式で評価する方針が示唆されているためです。
■ 新たな評価方式「残余利益方式」とは?
新方式として示された「残余利益方式」による評価額の計算イメージは次のとおりです。
残余利益方式による評価額=簿価純資産±数年分の超過収益
簿価純資産:直前期末の純資産をベースに計算します。事業用土地なども時価ではなく「帳簿価格」で評価します。
数年分の超過収益:過去数年分の当期純利益などをベースに計算します。高収益な企業はその分が評価額に上乗せされる一方で、赤字や低収益の企業は簿価純資産から適切に減額される仕組みです。
株価計算に必要な資料は「直前期末の貸借対照表」と「過去数年分の損益計算書等」のみとなり、計算構造自体はシンプルになります。
■ 早ければ2028年1月1日以降から適用開始
見直しの詳細は今秋を目途に決定される予定ですが、早ければ【2028年1月1日以降の贈与・相続等】から新方式が適用される可能性があります。
ここで重要になるのが、自社の「決算月」との兼ね合いです。
仮に2028年1月から新方式が適用される場合、現行方式で株式贈与等を実行できる期限は「2027年中」となります。現行方式では直前期の決算状況が株価に大きく影響するため、例えば「12月決算」の企業は、その直前となる「2026年12月期」の決算において株価対策を完了させておく必要があります(「1月決算」の企業であれば「2027年1月期」となります)。
■ おわりに
新方式が導入された場合は多額の税負担が生じるなど、今後の事業承継計画に大きな影響を与える可能性があります。次世代への事業承継対策は重要ですが、これについては事業継続への配慮から、何らかの税制上の措置が設けられることも考えられます。
一方で、より注意が必要なのが少数株主などからの「株式集約」です。親族外からの買い取りや株式の集約といった取引については、こうした税制上の特例措置の対象外となる可能性が高く、評価額の高騰がダイレクトに買い取り資金の負担増になります。そのため、事業承継と併せて、評価額が上がる前に「自社株の集約」を進めておくことが非常に重要となります。
事業承継や自社株の集約を少しでもお考えであれば、まずは「新方式と現行方式で、自社の株価がどれだけ変わるのか」を把握することを推奨いたします。「自社の場合はどうなるのか?」と少しでも気になられた方は、当法人までお気軽にご相談ください。