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あがたグローバル社会保険労務士法人船井総研 あがたFAS

変動金利型住宅ローンは金利上昇に耐えられるか

井口 秀昭
2026/10/01

 つい2~3年位前までは、長く続く低金利にすっかり慣れ親しんでしまい、金利なんて永遠に上がらないのではないか、というような雰囲気さえありました。ところが、金利を巡る環境はすっかり変わり、「金利ある世界」が到来、近年は更なる金利上昇が懸念される状況になっています。

 当時の低金利が継続するものとして、経済的行為を行った人は決して少なくありません。低金利が続くとしたら、借入を増加させるのが合理的です。そうした認識の下、借入(債務)を増大させてきた代表格が国債と変動金利型住宅ローンといえるでしょう。したがって、金利情勢が反転すると、低金利状態が長く強烈だっただけに、この両者は一転苦境に陥ります。国債については稿を改めるとして、今回は変動金利型住宅ローンへの影響について考えてみたいと思います。


固定金利か変動金利かの選択

 住宅ローンを借りようとする人は、借入時点で金利について変動制か固定制かの選択を迫られます。その選択においては、将来の金利予想がベースになることは当然ですが、その前に以下の点は踏まえておかなければなりません。通常の場合、固定制の方が変動制より金利が高いということです。というのは、固定制は長期金利に、変動制は短期金利に連動し、そして、長期金利は短期金利より高いのが普通だからです。固定金利が変動金利を上回るその金利差は将来の金利上昇リスクに対する保険料だと捉えることもできます。固定金利を選択すれば(保険料を支払えば)、世の中の金利が上昇しても自分が支払う金利は従前のまま維持できるからです。

 そして、近年は保険料(固定と変動の金利差)が大きくなっていることにも注意しておかなければなりません。アベノミクスにおける異次元の金融緩和の時代は、日銀は本来制御すべき対象とされる短期金利だけでなく、長期金利も強引に引き下げていたため、長短金利差は縮小し、固定(フラット35)と変動(銀行の最優遇金利)の金利差は1%を大きく割り込む水準まで縮小していました。ところが、金融の正常化に伴い長短スプレッドが回復し、近年の金利差は2%を超える水準にまで拡大しています。これだけの金利差を見せつけられると、なかなか固定制は選びにくいのではないかと想像します。

 こうしたことを前提に、その保険料が将来の金利上昇リスクに見合うかどうかを判断して、変動制か固定制かを選択することになります。ただ、数年先というならともかく今後何十年にもわたる金利動向を正確に予想することは専門家でも難しいのに、素人ではとても手に負えません。現在、変動制を選択している人が8~9割といわれていますが、多くの人が現在の金利はそれほど変わらないものとして、目前の低金利につられ、変動制を選択しているのが実情だと思われます。

 その変動金利型住宅ローンが金利上昇局面を迎え、ピンチになってきています。


歴史的低金利の継続を前提にしたローンの大型化

 変動制ですから、金利が上昇すれば、負担が増えるのは当然です。ただ、今回の場合、低金利時代が余りに長期化したため、その低金利を前提にして貸出金額をボリュームアップした商品を強力に普及させたことが、事態をより一層複雑化しています。たとえば、頭金なしのフルローン、貸出期間が超長期の50年ローン、夫婦2人で借りるペアローンなどです。これらはいずれも史上まれに出現した超低金利の永続性を前提に、組み立てられていますから、金利上昇には脆弱性を持ちます。


金利を落ち着かせるか、収入を増やすか

 変動金利型住宅ローンの金利は、前述したように、直接的には短期金利、特に日銀の政策金利のインパクトが大きいのですが、政策金利の決定には国の財政状況(国債発行状況)や経済政策の方向性も大きな影響を与えますから、政府の政策にも注目する必要があります。

 現在の金利上昇は日本だけでなく世界的潮流であり、インフレ傾向も収束の兆しが見えませんから、そう簡単には収まりそうにありません。変動金利型住宅ローンの事態の悪化を防ぐために、政府が行うべき施策には以下の2つが考えられます。一つは、元のような低金利まで戻ることは難しいとしても金利上昇をできるだけ抑制させること、もう一つは、金利上昇は容認しながら、その負担を凌駕するような国民の収入金額の増加を図ることです。この2つの政策は国債発行に対するスタンスが正反対に異なります。

 金利上昇を抑えるためには、国債発行を抑制しなければなりませんから財政の健全化が必要になります。ただ、そうなると景気浮揚効果は望めません。一方、国民の収入を増やすには多少の金利上昇には目をつむり、国債増発により積極財政を行い、景気刺激的な予算を組む必要があります。政府は「責任ある積極財政」を掲げ、経済成長をさせることにより国民収入を増やすことを目標とするようです。

 健全財政で国債発行を抑えれば、金利上昇の抑制効果が期待できます。一方、「積極財政」では、国債が増加しますから金利には確実に上昇ドライブがかかりますが、最も期待される財政拡張による景気浮揚効果は、これまでの数十年の実績が示すとおり、その実現が保証されているわけではありません。もし思惑通りの経済効果が獲得できなければ、国民の収入はそれほど伸びないまま金利のみが上昇するという最も望ましくない結果を招いてしまうことが懸念されます。


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