利益指標として何を基準にするかは、時代によって、会社によって、あるいは対象として誰を想定するかによって、変わります。
異業種間比較が困難な売上高利益率
利益指標として最もポピュラーなのは、利益を売上高で割った売上高利益率です。売上高利益率は非常に明快なのですが、大きな欠点があります。それは、業態が違えば売上高のベースが異なり、業種を超えた比較が困難になることです。売上高利益率は同一業種の中で優良会社を探すときには非常に有効な指標ですが、幅広い業種の中で企業を比較するときには有用性を欠きます。
株主目線のROE
その点、あらゆる業種にわたって共通に使える利益指標に、利益を自己資本で割るROE(Return On Equity自己資本利益率)があります。ROEは株主財産である自己資本に対してどれ位稼げたかを見るのですから、どんな業種においても比較可能です。したがって、株式市場においては非常に有効な指標であり、ROEの高い会社は文句なく「いい会社」と評価されます。
ただ、「いい会社」というとき、誰に対して「いい会社」かということを意識しているかが問題です。ROEは会社全体を見ているわけではなく、株主しか眼中にありません。会社全体の収益性は低くても、借り入れにより自社株買いをして(このことを「レバレッジを効かせて」と言います)、自己資本を圧縮すればROEを上昇させることができます。つまり、ROEは財務戦略だけでどうにでもなるのです。「会社は株主のもの」と割り切れば、ROEは最重要な指標です。しかし、「会社がすべてのステークホールダー(利害関係者)のもの」とする立場からはROEだけで会社を評価することはできません。
すべての利害関係者のためのROA
そこで登場するのが利益を総資産で割るROA(Return On Assets総資産利益率)です。ROAは企業が所有する総資産がどれだけ利益貢献しているかを測る指標です。
ROAは財務戦略を弄することでは操作できません。ROAを上げるためには、本業をよくしなければなりませんし、収益性の低い資産の処分も必要になります。ROAを引き上げるには会社の本当の力が必要とされますから、簡単にはできません。
株式市場においてROEは依然として重要です。しかし、ROE向上のために小手先の財務戦略によるのではなく、すべてのステークホールダーを意識してROAを引き上げ、その結果として株主のためのROEがアップするという考え方が必要になります。