「経営トピックスQ&A 2024年10月号」掲載
Q.雇用保険法の改正により、育児休業等をする場合や育児時短勤務をする場合に支給される新たな給付金が創設されると聞きました。概要を教えてください。
A.■はじめに
2024年6月12日に公布された「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」により雇用保険法が改正され、「出生後休業支援給付金」及び「育児時短就業給付金」が創設されます。
■出生後休業支援給付金
夫婦ともに育児休業を取得した際に、既存の育児休業給付等とあわせて受給することができる「出生後休業支援給付金」が創設されます(施行日:25年4月1日)。
この給付は、子の出生直後の一定期間内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、雇用保険被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、雇用保険被保険者の休業期間について28日を限度に、休業開始前賃金の13%相当額が支給されます。既存の出生時育児休業給付金、及び育児休業給付金(180日まで)の支給率は67%ですので、それらと合わせて受給した場合、休業開始前賃金のおよそ80%の金額(実質的に休業前の手取り賃金相当額)が受け取れるということになります。

※引用_こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について」
夫婦共働き世帯の女性が「出生後休業支援給付金」を受給するためには、男性(配偶者)が子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業等を取得している必要があります。そのため、「子どもが生まれたら、父親も14日以上の育児休業を取得する」という動きが一般的になるかもしれません。
なお、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得の要件は求められません。全ての雇用保険被保険者に共通する他の要件を満たしている限り、出生後休業支援給付金を受給することができます。
■育児時短就業給付金
育児短時間勤務をしている雇用保険被保険者に対する新たな給付として、「育児時短就業給付金」が創設されます(施行日:25年4月1日)。
この給付は、2歳未満の子を養育するために短時間勤務をしている場合、短時間勤務中に支払われた賃金の10%が支給されます。
子の出生・育児休業後の労働者の育児とキャリア形成の両立支援の観点から、企業には育児のための短時間勤務制度を選択できるようにすることが求められていますが、現状では、短時間勤務制度を選択したことにより賃金が低下した労働者に対して給付される制度はありません。育児による離職ではなく、就業継続のために短時間勤務を選択することを後押しするための改正といえます。
■結び
22年4月1日から施行された改正育児・介護休業法では、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対し、個別に育児休業制度等に関する周知及び休業の取得意向の確認を行うことが義務付けられました(義務違反に罰則はありませんが、行政指導の対象とされます)。これは本稿で取り上げた両給付金の周知を含むものです。
従業員が「制度を知らなかったから給付を受けられなかった」という状況が生じないよう、制度の個別周知を形式的なものとせず、より確実な対応が求められるでしょう。