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【経営指標】「流動比率」

2023/03/20

今回も安全性指標の一つである「流動比率」について説明します。


 唐突ですが、会社はどうなった時につぶれるのでしょうか?

 答えは、そうです。「負債の支払いができなくなったとき」です。ですから、どんなに多額の負債を有していても、その支払日に支払うべき負債額を超える現預金を保有していれば大丈夫、ということになります。


 次に「流動負債」について説明します。

 流動負債とは、「1年以内に支払日もしくは返済日が到来する債務」をいいます。1年を境界としていますので、1年基準(ワン・イヤー・ルール)と呼ばれています。逆に、1年を超える債務は、固定負債と呼ばれます。


 重要な論点をもう一つ確認しておきます。

 貸借対照表の右側には、「負債の部」と「純資産の部」が並んで表示されています。税理士試験では、「負債とは他人資本」で「純資産は自己資本」と区別しなければ正解とはされません。

 しかし現実の企業経営では、この定義では不正確です。実務上は、「負債とは、支払期日に支払い、もしくは返済しなければならない資金」、「純資産とは、返済の義務がない資金」とご理解ください。


 ここから本題に入ります。

 「流動比率」とは、「短期的に支払期日が到来する流動負債を、短期的に資金化できる流動資産で支払うことが可能か」という、短期的な安

全性を表す指標です。

 具体的には(流動資産÷流動負債)で算定されます。一般的には、120%程度を確保していれば安全性を有していると判断されます。


 新たに取引を開始する際、相手の会社の『決算書』を入手して支払い能力の有無を確認する場合があると思います。この時に、貸借対照表の一番上の項目である、流動資産と流動負債を比べることで、簡易的に安全性の判断をすることができます。

 また、前回と前々回にご説明した、「手元流動性」と「自己資本比率」を併せて 確認し、売掛金の回収可能性が高いとの判断を得てから取引を開始したり、必要に応じて取引条件の見直しをしていただくことも重要です。


 実は、自社の流動比率を見る場合に、売掛金の回収が停滞したり、必要以上に在庫が増加してしまった場合にも、流動比率は上昇する傾向にあります。この場合は、流動比率だけ見ても、資金需要が増加している異常値を発見することができません。

 そこで私は、運転資金の算定方法の一つである【(受取手形+売掛金+在庫)-(支払手形+買掛金)】で、必要運転資金が増大していないかを同時にチェックしていただくようにお願いしています。


 自社の流動比率がどの水準にあれば短期的な安全性が確保できているかを確認するとともに、月次レベルでは必要運転資金を算定し、売掛金と在庫がいたずらに増大していないかを確認いただくことをお勧めします。



(2023年3月あがたグローバル経営情報マガジンvol.81 「試算表を読みこなすための経営指標(基礎編)」に掲載)

執筆者

芦原 誠Makoto Ashihara

あがたグローバル税理士法人 代表社員 理事長
あがたグローバルコンサルティング株式会社 代表取締役社長
税理士

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