「経営トピックスQ&A 2024年7月号」掲載
Q.コロナ禍で調達した借入の返済が始まりました。売上は回復してきているものの、人件費をはじめ各種費用もかなり増加しており不安を感じています。安定的に返済していくためにはどのようなことに留意すべきでしょうか?また、活用できる政府の支援策等があれば教えてください。
A.新型コロナウイルス感染症が5類となり1年が経過し、経済活動の正常化が進んでいます。2023年7月以降に本格化したゼロゼロ融資の返済は、2024年4月には最後の返済開始ピークを迎え、猶予されていたコロナ資金の返済も本格化しました。コロナ禍以前を上回る業績を上げる企業も出てきていますが、コロナ禍による社会活動の変化に対応しきれていない中小企業も少なくありません。これに加え、インフレによるコスト高、人手不足、円安等の影響により、企業を取り巻く経済環境は厳しい状況が続いています。
このような環境下、政府の中小企業向け施策は一時的な資金繰りの支援から、本業再建による収益力強化のための支援、経営改善や事業再生支援へと移行しています。自社の状況に応じて、適切な支援策を活用することが必要です。
■収益力改善に向けた行政によるフォロー
コロナ禍の影響による経済社会の変化に対応するための支援策として始まった「事業再構築補助金」は、抜本的な見直しを行った上で今年度も継続されることになりました。支援枠の簡素化(6枠⇒3枠)、事前着手制度の原則廃止、コロナ債務を抱える事業者への加点等が発表されています。
また、今年度は「中小企業省力化投資補助金」が新たに創設されました。この補助金は、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を促進し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としたものです。補助対象となる汎用製品は「カタログ」に掲載され、その中から選択して導入する必要があります。従業員数に基づく企業規模により補助上限額は異なりますが、補助率は1/2以下、最大で1,500万円の補助金を受けることができる制度です。
ものづくり補助金、IT導入補助金も継続されることが発表されていますし、それ以外にも様々な支援策があります。中小企業庁のウェブサイトである「ミラサポplus」(中小企業庁が運営する中小企業向けの補助金・総合支援サイト)、「J-Net21」(中小企業基盤整備機構が運営する補助金や支援・展示会情報等が掲載されたサイト)等を活用すれば、タイムリーに情報を入手することが可能です。
■資金繰りが厳しい場合の対応策
コロナ禍以降、政府はゼロゼロ融資やコロナ借換保証等の施策を講じてきました。2024年7月以降は、資金繰り支援をコロナ前の水準に戻したうえで、金融機関などと連携しながら中小企業の経営改善や事業再生への支援を強化するとの方針を示しています。
各都道府県に設置されている中小企業活性化協議会では、収益力改善フェーズ、再生フェーズ、再チャレンジフェーズと、企業の状況に応じた支援を実施しています。また、民間支援機関のサポートにより経営改善計画等を策定した場合、その費用の2/3(上限あり)を補助する施策もあります(早期経営改善計画策定支援、経営改善計画策定支援)。資金繰りに不安がある場合、これらの支援策を活用し、できる限り早めに対策を打つ必要があります。
■まとめ
補助金等の様々な支援策を有効に活用するためには、まずは早期に情報を入手し準備を始めることが重要です。また、経営改善や事業再生等についても、着手が早ければ早いほど成果は出やすく、選択肢も広がります。収益力改善を進め、安定的な企業経営を続けていくためにも、自ら積極的に情報を入手するとともに、できる限り早急に具体的な行動を起こすことをお勧めします。