地政学とは
国際情勢が不安定になると「地政学的リスク」という言葉を目にすることがあります。
地政学とはいったい何なのでしょうか。
定義については細かい違いはあるようですが、地政学は「地理的条件」の観点から政治、経済及び軍事を分析するアプローチと理解しておけば良さそうです。
たとえば、海洋国家は貿易の要である海上輸送を守るために強い海軍力を必要とし、大陸国家は国境線を死守するために強い陸軍力を必要とする、といった視点は地政学に基づくものです。地政学の考えに触れると、置かれている「地理的条件」によってとるべき行動やその優先順位がまったく異なることが分かります。
シャープの戦略転換
5年ほど前の話題になりますが2016年8月にシャープが鴻海(ホンハイ)精密工業グループに買収されました。
シャープがこのような道をたどることとなった大きな要因の1つは、ある戦略転換だったといわれています。
それは2009年の堺工場の稼働です(日経BizGate「シャープ凋落への岐路は、あの戦略転換だった」2016年6月8日)。
シャープはそれまで自社のテレビ向けに液晶パネルを生産していましたが、堺工場で大量生産する液晶パネルを他社メーカーに外販するようになりました。
これにより、シャープは、コスト競争力を継続的に維持・向上させるために、グローバルな資金調達力や多額の設備投資がものを言う「地理的条件」に身を投じることとなったのです。
資金調達力に関係がある財務項目として、レバレッジ(純資産の何倍まで借入が可能か)などがあります。
その頃すでに液晶パネルで競合関係にあったサムスン電子の純資産は約6兆円(2009年12月期)であったのに対し、シャープの純資産は約1兆円(2010年3月期)でした。サムスン電子はその他にも事業を行っているとはいえ、純資産に約6倍の差がありました。資金調達力についてシャープは不利であったと言わざるを得ません。
後講釈ではありますが、シャープは戦略転換したことでまったく違う「地理的条件」に身を置き、今までと異なる戦い方が求められました。しかしながら、その変化に十分対応しきれないまま前述のような結末となってしまったのではないでしょうか。
シャープの事例を教訓に
私はこれをある大企業の特殊な出来事とせずに、教訓としなければならないと思います。特に新規事業を展開する際は、事業が属する産業の「地理的条件」を洞察した上で、戦術を考えていく必要があります。
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(2021年9月あがたグローバル経営情報マガジンvol.24
「今月の経営KEYWORD」に掲載)