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事前確定届出給与について

2022/12/01

税務トピックスQ&A 12 月号


Q.役員に対しても毎月の定額報酬の他に、従業員と同様に賞与を支給することを検討しています。この場合どのような手続きが必要でしょうか。


A.■損金処理が可能な役員給与

 法人税法は、法人がその役員に対して支給する給与のうち、次に掲げる 3 種類の給与については損金に算入するものと規定しています。

・定期同額給与

・事前確定届出給与

・一定の業績連動給与

 質問のケースは「事前確定届出給与」に関するものと思われます。


■ そもそも役員報酬・賞与とは

 役員に支払う報酬には「役員報酬」と「役員賞与」があります、その特徴は以下の通りです。

・役員報酬 給与として毎月支払われる報酬

・役員賞与 退職給与以外の臨時的な報酬

 会社が従業員に支払う給与や賞与は原則として損金算入できますが、役員への報酬は税務上の規定に基づいて支給されなければ損金に算入できません。損金扱いにならない報酬の支給は、法人税の課税対象となります。

 定期同額給与は、1 ヶ月以内の一定期間ごとに事業年度内に毎月同額を支払う役員給与のことで、損金に算入されます。

 事前確定届出給与は、「事前確定届出給に関する届出書」を所轄税務署長に提出することにより、損金に算入されます。


■ 事前確定届出給与に係る損金算入要件

(1) 事前確定届出給与に関する届出書の記載内容

 役員賞与を損金に算入するには、「事前確定届出給与に関する届出書」に、決議をした日や機関等の名称、職務執行開始日、届出期限などを記載します。

付表には支給対象者の氏名と役職名、職務執行期間、支給時期と支給額などの記載が求められます。

(2) 事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

 「事前確定届出給与に関する届出書」は、提出期限までに提出しなければなりません。

①通常の場合

 株主総会等の決議により役員の職務につき確定額の定めをした場合には、次のうちいずれか早い日が期限となります。

イ.その決議をした日から 1 ヶ月を経過する日

ロ.会計期間開始の日から 4 ヶ月を経過する日

新設した法人が所定の時期に所定金額を支給することを定めた場合には、設立の日以後 2 ヶ月を経過する日が期限となります。

②臨時改定事由による届出

 事業年度の中途で新たに役員に就任した者に対して事前確定届出給与を支給する場合など、その事業年度において、その役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情により、その役員の職務につき新たな確定額を定めた場合には、それらの事由が生じた日から1 月を経過する日までとなります。


■ 届出どおりに支給されなかった場合

 所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給金額等が異なる場合は、事前に支給額が確定していたものといえないことから、事前確定届出給与に該当しないものとなります。それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入となり、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入とされることになります。

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