電子帳簿保存法(正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」長い!)ですべての事業者に実施が求められている電子取引データのデータ保存の義務化がいよいよ2024年1月1日から開始されます。事業年度とは関係なく、2024年1月1日以降に取得・提供した電子取引データはすべてデータでの保存が必要となります。
税務顧問をさせていただいているお客様につきましては、担当者から説明等があったと思いますが、制度開始前に再度何をすべきか等について確認をしてみたいと思います。
なお、施行令、措置法は2024年1月1日施行日のものを前提としております。
また、法人だけでなく、個人事業者(アパート経営なども含む)も対象となります。
1. 保存の対象となる取引や書類は?
法律の規定(電子帳簿保存法2条5号)では、「取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」を電磁的方法で授受した場合が対象となります。
請求書や領収書だけではなく、納品書や送り状、注文書、見積書、契約書など、取引に影響を及ぼす書類すべてが対象になります。
また、提供を受けた場合だけでなく、提供した場合も含まれます。
なお、従業員がインターネットなどで物品を立替えた場合の領収書などが電子データの場合には、そのデータのスクリーンショットなどを提供してもらう必要があります。この場合、パソコン等の画面を写真等で保存したデータは、スキャナ保存の対応となるため、電子取引データの保存をしたことになりませんのでご注意ください。
見積書に関しては、金額変更など条件変更により複数回提出する場合がありますが、それぞれが確定データとなるため、そのすべてを保存することが求められています(電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)(以下通達解説)7-1解説文(2))。なお、相見積もりで取引までに至らなかったもの について、当初の通達解説には保存の対象と明記(通達解説4-31(注))されていたことから、保存の対象になるものと考えられます(改正後の通達解説4-27(注)ではこの文言は削除されています。)。なお、この点は今後より明確な対応方針が示されることも考えられます。
なお、同じ取引情報を書面でも受領をしている場合で、書面を原本としている場合は電子データの保存は必要ありません。ただし、書面の取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれている場合など書面の内容が電子データと同一ではない場合には、電子データの保存も必要になります(電子帳簿保存法一問一答(以下Q&A)問14)。
2. 保存する際の注意点は?
電子帳簿保存法に則って保存する場合の対応は以下となります。
① 改ざん防止のための措置(規則4条1項)
・タイムスタンプが付与されたデータを入手
・保存するデータにタイムスタンプを付す
・データの授受と保存を訂正削除履歴が残るシステムか訂正削除ができないシステムで行う
・訂正削除の防止に関する事務処理規程を制定し、遵守する
事務処理規程のサンプルは国税庁のホームページにあります。法人用と個人事業者用がありますが、規程を遵守できるよう、法人でも会社の規模等を勘案して個人事業者用を参考に規程を整備することをご検討ください。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
② データの可視性を確保する
・モニター及びその操作説明書の備付け(規則2条2項)
・検索要件の充足
検索要件は取引年月日、取引金額、取引先で検索できるように求められています(規則2条6項5号イ))。また、税務調査の際には検索要件の2つの項目で検索ができるようにするか、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じる必要があります。
ただし、以下の場合で、データダウンロードの求めに応じられる場合には検索要件は必要ありません。
・基準期間(2期前)の売上高(損益計算書の売上高)が50,000千円以下
・電子取引データをプリントアウトした書面を日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提供できる場合
また、索引簿を作成した場合には検索要件の3つの事項を付して個々のデータを保存する必要はありません。事務処理の効率性を考えてご対応ください。なお、索引簿の例は先ほどの国税庁のHPにありますので、ご参考にしていただければと思います。
3. 保存の仕方は?
保存の仕方は対象書類で様々な対応が考えられます。一例を示すと以下となります。
・専用システムでの保存
・請求書、領収書について会計システムで保存
・フォルダで保存(年度別、年度別相手先別など)
なお、それぞれのデータがダウンロードの求めに応じられるかの確認も必要です。
4. 猶予措置について(電子帳簿保存法施行規則第4条第3項)
設備投資が必要など相当の理由(通達7-12)がある場合として所轄税務署長が認めた場合で、税務調査の際にデータダウンロードの求めに応じられかつ電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提供ができる場合には、猶予措置の適用を受けることができます(Q&A問61)。これについて税務署などへの事前の申請は不要です。
ただし、猶予措置の適用を受ける場合でも電子取引データのデータ保存は必要です。印刷して紙だけでの保存は認められません(通達7-13)。
国税庁では電子帳簿保存法の特設サイトを設けております。前述の規程例のほか、制度概要のパンフレット、Q&Aなど様々な情報を提供しておりますので、是非ご確認ください。
また、弊事務所では担当者に確認表にて保存状況の確認をするようにしております。ご不明点等は月次監査の際などに担当者にご相談ください。